アンダーグラウンド掃討作戦(四百八十)
物凄い風圧だった。宮園課長が目にしたのは、決して珍しい物ではない。実際それは、ある意味『ありふれた』物。
しかしアンダーグラウンドで、『拝むこと』になろうとは、思ってもいなかった。見た瞬間、手を頭の上にして拝んでいた訳だし。
『ドォォォンッ』『ガシャン』『バキバキッ』『ドゴーンッ』
強風に煽られ、地面に叩きつけられた調和型無人飛行体が、無残にもバラバラになっている。
自爆装置が起動して、勝手に爆発する物まであるではないか。
「あぶねぇじゃねぇかっ! 何でヘリなんか来るんだよっ!」
違った。拝んでなんかいなかった。自分の頭を守るために、両手で頭を隠したのが『拝んでいる』と見えただけだ。
よくよく考えれば、神より自分の方を信じる宮園課長のことである。人に『礼』を言うような奴ではなかったのだ。
しかし何だ。折角助かったと言うのに。開口一番が文句とは。
何とも救いようの無い言い草である。だったら、飛び散った部品の一つでも当たっていれば良かったのに。
しかし宮園課長は耳をも塞ぐようにして、相変わらず頭を覆ったままだ。
「おいっ! ドローンも居たみたいだぞぉ!」「何だってぇ?」
確かに頭上には、一機の黒いヘリがホバリングしていた。
さっきまで自動警備一五型の隊列に対し、後ろから上から、機銃掃射をぶっ放していた所だ。
そして追い越した所でグイッと操縦桿を引き、現在は静止中。
『ババババッ! ババババッ!』「オラオラオラァァァッ!」
何故か自動警備一五型は無抵抗である。
ヘリからの機銃掃射を受けても反撃をしない所か、遠慮なく弾をぶち込んでいる黒田に対し、照準を合わせようともしない。
傍らに騎乗していた一般兵達は、ヘリからの機銃掃射なんて受けようものなら『肉片』になってしまう。そんなのは御免だ。
一斉に廃屋の陰へと走り込んでいた。『隙あらば反撃しよう』なんて考える輩は、誰もいないらしい。
「あれ? もしかして『アルバトロス』じゃないか?」「何ぃ?」
黒田がふと下を見れば、そこには人影らしき物体が。図らずも黒田の判断で宮園課長を救った格好になるのだが。
しかし救った方も、その自覚は無いらしい。
「何ぃじゃねぇよっ! さっきから聞こえないのかよっ!」
「何にも聞こえねぇよっ!」「聞こえてんじゃねぇかよっ!」
今は銃声が止んだので聞こえているだけだ。黒井は出来れば操縦に集中したい。こんな壁だらけの狭い空間で、右だの左だの、挙句の果てに『止まれ』だなんて。無茶を言うにも程がある。
「見て見ろよっ! 野郎、引っ掛かって抜けらんねぇみたいだぞ!」
チラっと黒井が振り向くと、黒田は笑いながら下を指さしている。
「見て良いのか! どれっ!」「こら馬鹿! 傾けんなっ!」
突然傾けたので、放り出されそうになった黒田が叫ぶ。実際は少し揺れただけ。そこまでの角度ではない。黒井が笑顔で振り返った。
「じじぃが『見ろ』って言ったんだろうがぁ」「このやろぉ!」




