アンダーグラウンド掃討作戦(四百七十七)
映像は直ぐに切り替わった。それがスロー再生される。
現実に誰も直視していない内に何が起きたのか。それは意外にも、『マンホールの蓋』が円盤投げのように飛んで来た事実であった。
画面が斜めに二分割された直後、一旦停止。ヒュルヒュルと戻してまた再生。また投げる。最後はノイズと共に映像が乱れて終わり。
「あんなもん、良く投げたな」「しかも、結構な勢いで」
制作者サイドにしても、『予想外の飛来物』であったに違いない。
肩を竦めて感心するどころか、むしろ呆れている。
「防御機構、作った方が良いですかね?」「要らんだろ」
高田部長の提案は、本部長によって秒で否決された。それでも悔いは無さそうだ。
表情は完全に『ですよね』となっていて、おまけに苦笑いだ。
「イチロクの編隊が到着しました。映像出しますか?」
スクリーンを見てニヤニヤしている二人に朱美が問う。
すると高田部長は苦笑いで指をクルクルし始めた。
「もう良いや。早く次の映像を出せ」「はい。今出します」
特に『学ぶこと』は無かったようだ。朱美が『タンッ』とキーボードを叩くと、惜しげもなく切り替わった。
今度はスクリーンに、角度の違う画像が四分割されて表示され始める。同じ高度、同じ速度で宮園課長の周りを周回飛行しているのだろう。それが同期しつつ滑らかに動き続ける。
すると高田部長が嬉しそうに、本部長を見ながら、スクリーンを指さしたではないか。
「どうです? 本部長」「んん? 何がだ?」
「中々良い動きするでしょう? ブレも一切無く、映像もクリア!」
各機で撮影した映像は、各機内で処理されるのではなく、一旦親機に送られてそこで画像処理が行われる。
こうして編集された映像を一括送信することで、滑らかな映像を作り出すことが出来るようになっているのだ。
言うのは簡単だが、実機に搭載するレベルにまでに機能を落とし込むには、地道な努力が必要不可欠だ。何日残業させたことやら。
「映っている者が良くないなっ」
「えぇえぇえぇ。本部長、それは無いですよぉ」
すがっても駄目だ。パチンと叩かれてしまった。
「しかし、悪運だけは強い奴だな。早く始末してしまえよ」
見たくもないようで、手をパタパタして直ぐにでも指示が出そう。
「良いすか? 奴は『行方不明扱い』ですけど、まだ社員ですよ?」
しかし高田部長の一言で、その手の動きが止まった。
「何だと? ありゃそうしたら『労災』ってことになるのか?」
渋い顔だ。腕組みして考え始めてしまったではないか。
「なるんじゃないですか? させませんけど」「だよなぁ」
やっぱり。これから銃殺しようとしている奴らが、『労災』なんてことを気にする訳が無かったのだ。
さよなら宮園課長。今度こそ本当に。
「良し撃て!」「嫌です」「はぁ?」「絶・対・嫌ですよぉ」
朱美の表情を見るに、『同情している』訳では無さそう。




