アンダーグラウンド掃討作戦(四百七十一)
周りでは銃撃戦が始まっていた。廃ビルの上からの乱射。
確かに赤月からの『全員退避』の指示はあったものの、それを聞いたのはバリケード付近の奴らだけだったのだ。
バリケードは効果を高めるために、廃ビルがある場所に設置されている。そして廃ビルの中にも少なからずの人数が配置されていた。
『パパパッ』『パァァン』『パパパッ』『ダダダダッ』
寄せ集めらしく、多種多様な発砲音が響き渡り、辺りは騒然とし始めた。耳を澄ませば『チャリンチャリン』と、薬莢が落ちる音も聞こえるかもしれないが、誰も聞いてはいないだろう。
「始まったぞっ! 早く押せっ!」「押してるよ!」
さっきから押しているのに、黒星は三ミリしか進んでいない。
「イテテテテッ! 引いてどうすんだよっ!」「やっぱだめか」
試しに引いてみたのだが、何と言うことでしょう。ピッタリとはまってしまっているではないか。
『ヶッヶッ! ぃぃょぃぃょぉ』「テメェ、何言ってんだよっ!」
その証拠に、下から聞こえる声も大分小さくなってしまっている。
しかし怒ったり叫んだりしてみても、既にピクリとも動かなくなってしまっているのは明らかだ。赤月は押すのを諦めた。
『ブゥゥン。ピコピコッ』
不思議な音がして、赤月は音のした方を見上げた。ギョッとする。
「うわっ! 見つかったっ!」「何だぁ? あっ!」
赤月は咄嗟に腕で顔を隠す。そこには殺人ドローンがフワフワとホバリングしていたからだ。急ぎ横目で銀色のシートを探す。
しかし直ぐに気が付いた。自分が今『生きている』ことに。
殺人ドローンは人を見つけたら、基本『瞬殺』である。それが二人を目の前にして、何故まだ生きていられるのか。
そして今聞こえた『ピコピコ』音は、一体何なのか。
「丁度『リセット』してやがるな」「リセット?」「あぁ」
黒星がしたり顔で言う。そりゃそうだろう。何しろ『自分で開発した兵器』なのだから。自慢したくなる気持ちも判る。
「何かのトラブルが発生したときに、飛びながらでも出来るんだ」
偉そうにドローンを指さしながら、振り向いての説明だ。
「詳しいんだな。流石ブラック・ゼロなだけはある」「ま、まぁな」
黒星は耳を澄ませる。確かに今のは『指示過多』によるリセット音。だとしたらあと数秒は大丈夫なはず。
「再起動した後はどうなるんだ?」「そりゃぁ、再び殺戮の限りさ」
またもしたり顔で説明するのだが、どうしてそこまで『余裕』で居られるのか。赤月は一瞬『黒星の陰』に隠れて逃れようと考えたが、黒星がやられた後は次は自分。
かと言って走り出せば、自分が真っ先に狙われる可能性も。
「やヴぁいじゃねぇかよっ!」「大丈夫だ。ジッとしてろ」
『コンニチワッ! ミントチャンダヨッ! 夜露死苦ネッ★彡』
「起動したぞ」「うわわわわっ!」「大丈夫だって。動くなよぉ」
背後の赤星を庇うように両腕を伸ばし、まるで『守っている』かのよう。凄く珍しいことだ。調和型無人飛行体がゆっくりと回転し、銃口が黒星を向いてもなお。確かに発砲は無い。
しかし隣のカメラが、『ピント合わせる動き』で光を反射させた。




