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アンダーグラウンド掃討作戦(四百七十)

「おいあんたっ!」「くそっ、つっかえて入らねぇ」「ちょっと!」

 赤月はデブの元に走り寄る。しかしデブは赤月を見てもいない。

 必死に梯子を降りようとしているのだが、当然のように腹がつっかえているのだ。もう息は吸っている。全力で。


「スゥッスゥッはぁ。スゥッスゥッはぁ」「何やってんの?」

 二度吸った所で『細くなる限界』を迎える。めい一杯だ。

 もしかして『根性の三度目』を吸えたならば、更に腹は凹むのかもしれない。しかしボディーが我儘なら、呼吸も実に我儘。

 どうしても息を吐いてしまうのだ。すると腹はデブンと戻る。


「押し込め!」「あんた誰だよ」「押し込めって言ってんの!」

 デブは『自分だけは助かりたい』を前面に押し出している。

 そんな男に、誰が協力しろと言うのだろうか。赤月は渋い顔だ。


『押してやってくれぇ。そいつ、重要人物なんだってさぁ』

 突然『小さな声』が聞こえて、二人は顔を見合わせた。

 デブは自分を何度も指さして、得意気に『オレのこと』とアピールだ。しかし赤月は怪訝な顔のままだ。


「なぁに自分で言っちゃってんだよ。ふざけてんじゃねぇぞ?」

 そう。大体『重要人物』ってのは、自分から名乗るもんじゃない。

「俺じゃねぇよ。口閉じてただろっ。今のは、し・た・か・らっ!」

 デブは自分を指さしていた指の方向を、今度は『声のした方』に向かって変え、何度も指している。しかしそれは、自分の腹を何度もボヨンボヨンさせているに過ぎない。赤月は相変わらず渋い顔。


『そんな奴でも一応、『ブラック・ゼロ』なんだってさぁ』

 再び下からの声。確かに今のは腹の中を通って聞こえている。

 言った瞬間デブは下を見ていたので、肝心の『口元』は見えていないが、それでも『自作自演』でないのは確か。


「なんだ『一応』ってのはよぉっ! 『ちゃんと』だ、ちゃんと!」

 理由は『いちいち突っかかって怒り始めたから』だ。

 赤月は知っている。『ブラック・ゼロ』は『変わり者の集団』であると。そしていざ戦闘になったら、レッド・ゼロよりも強いと。

 あの隊長でさえ、訓練組手で一度も勝てなかったらしいし。


「じゃぁあんた、コードネーム持ってんのか? 俺は『赤月』だ」

 真顔でデブに語り掛ける。するとデブは赤月の目を見た。

 デブの方だって知っている。『レッド・ゼロ』は『血で血を洗う歴戦の勇士』であると。基本複数の格闘技を使いこなし、その段位を合わせると三段は下らない。そんな猛者達の巣食う魔境であると。

 そして『ネームド』は、格闘技に加えて武器は何でも使いこなす。


「お、おれは、く、『黒星』だ」「えっ?」「黒星だ」「ええっ?」

 赤月の顔が曇る。聞き間違えてしまったら大変だ。

「だから黒星だって!」『ハハハッ』「何度も言わせんじゃねぇ!」

 地面を何度も平手打ちしながら赤月を睨み付ける。赤月は顔に飛んで来た唾を腕で拭うと頷く。ちなみに手は相当痛かったらしい。

「おっ、おぉ。黒星。良い名前だ。うん。凄い凄い」

「じゃぁ押せっ! つぅ。お前のせいで黄金の右手が痛てぇよ」

 そんなの知らん。自業自得だ。しかし黒星は反省せずに下を向く。


「おめぇ、下で笑ってんじゃねぇぞっ! 聞こえてっからなっ!」

 赤月には何が何だか判らない。黒星の肩に両手を掛けた。

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