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アンダーグラウンド掃討作戦(四百六十五)

 黙って進路を変える。『あっち』とは随時変化するらしい。

 慎重に操縦桿を操作しなければ、たちまち上下左右のいずれかに激突してしまう。だから旋回中は文句を言う暇は無い。

 後ろから乗り出して指さす黒田の指先は、左へ旋回していくにつれて、黒井の左から段々と近付いて来ていた。


「近いって、あぶねっ。邪魔すんなっ!」

 それを左手で跳ね退ける。しかし黒田は、無理矢理下げられた手を再び持ち上げて、暗闇を指さした。


「だからあっちなぁ。判るぅ?」「判ってるって」「ホントォ?」

 邪魔な右手を再び打ち下ろす。仕方ないからと、イライラしながら黒井が左手で進行方向(予定)を指さした。


「うっせぇって! あのビルの間だろぅ?」「そそっ」「たくぅ」

 北が判れば、この辺の道路は碁盤の目。縦縦横横真ん中に丸。

 だからどこの通りを行ったって、何れ『蔵前橋通り』には辿り着く。それをどうしてわざわざ『この道』なのか。


「あの辺になぁ? 『おでんの自販機』があったらしいんだよ」

 物凄く『どうでも良い情報』が黒井の耳に飛び込んで来た。

 思わず後ろを振り返って、怪訝な表情になると『ハァ?』だ。


「おでん缶はココじゃねぇ。もっとアッチっ! 知らねぇのかよ」

 黒井が生まれた世界ではの話。ここは『山手線の外側』である。『おでんの自販機』は電気街の方。『山手線の内側』なのだ。


「アブねぇっ!」「うわぁあぁっ!」『ドゴォォォン!』

 廃ビルを前にして黒田が叫ぶ。爆音はヘリの衝突音ではない。

 黒井は操縦桿をグイッと倒し、華麗に避けることに成功。すると、ヘリの下側になったビルの窓ガラスが、勢い良く吹き飛んで行く。

 爆音は勿論窓ガラスでもない。反対側のビルからだ。


「倒れて来るぞ!」「見りゃ判る!」「避けろぉぉ」「うおぉぉっ」

 二人の追手が放ったロケットランチャーが、ヘリに命中する直前で逸れ、そのまま廃ビルの壁に当たったのだ。

 アンダーグラウンドのビルは、何時崩れてもおかしくない年代物ばかり。既に崩れかけているのに『追い打ち』を掛けられては、もう寝るしかないではないか。


 しかし黒井は『空』に、ある意味『人生』を掛けていた。

 雲を突き抜けて、高度一万メートルに達したときの爽快感。視界が開け、眩しい太陽を目にすれば照準もままならない。

 そんな高所から下界を眺めれば、まるで自分が『鳥』になったかのような錯覚に陥ることもない。


「焼き鳥になんて、なるもんかぁぁっ!」「何だそりゃぁぁっ!」

 黒井が叫ぶ。黒田は両手で懸命に体を支えている。ヘリは狭い路地を左右にスイングして、見事に切り抜けていた。奇跡が起きのだ。

 チラっと後ろを振り返っても、車じゃないから見えない。それでも水平になったヘリの下には、大量の土煙が這いずり回っていた。

 ホッとする暇もありゃしない。目の前は蔵前橋通りだ。右折右折。

 再び黒田が出しゃばって来て、右にいる黒井をシュっと指さす。


「お前の『最後の言葉』って、それなの?」「最後じゃねぇしっ!」

 言った傍から『最後』になりそうだが、ヘリは無事に右折した。

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