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アンダーグラウンド掃討作戦(四百六十四)

『チンッ! チンッチンッ!』「にゃろぉ、撃って来やがったっ!」

 叫んだのは黒田だ。黒井は無視する。もう既に黒井は、操縦桿を引いて機体を上に向けていた。サーチライトも当然上を向く。

 映し出されたのは『黒い天井』である。判っていたことだ。


 床面に自動小銃の弾が当たった位で、どうにかなるものじゃない。

 だから『ここからどうやって逃げるか』の方が重要。操縦に集中しなければならない。


「新車なのに、やってくれんじゃねぇかっ!」「ほっとけよ」

 しかし黒田は頭に血が昇ってしまっているらしい。

 確かに離陸から十秒で『事故車』、いや『事故ヘリコプター』になってしまったら、人の金で買った玩具であっても怒るのが本筋。

 おまけで付けて貰った『重機関銃』をセッティングし始める。


「良いからほっとけよ。出口を探そうぜっ!」

 一度『止せ』と言ったのに、後ろからガチャガチャする音が鳴りやまない。堪らず黒井は声を荒げた。チラっと後ろを見れば、黒田がもう『発砲準備』を整えているではないか。


「お返しだぁっ!」『ババババババババッ』「ワハハハハッ!」

「煩せぇ煩せぇ煩せぇ煩せぇ煩せぇ煩せぇ煩せぇ煩せぇ!」

 急いでいたから、ヘッドセットを付けていなかったのだ。

 それに爆音が響いて会話どころの騒ぎではない。黒田も叫んでいるばかりで、黒井の『猛烈アピール』も耳には入らないか。


 しかし何の弾みか、機体が斜めになった所で銃弾の数発がジープを貫いたようだ。撃たれた方はたまったもんじゃない。

『ボォォォンッ!』「やったぜぇっ!」

 一瞬左下が明るくなったと思ったら、直ぐに薄明りになった。

 派手にやってくれたものだ。しかしお陰で『爆音』も鳴り止んで助かる。後はこちらが『安全に脱出』するだけだ。無理ポ。


「どうだぁ! 今の見たかぁ?」「見えねぇよ!」

 まただ。後ろから顔を出して来て、いちいち自慢しに来るな。

「何だ、ちゃんと見てろよぉっとっとぉ」「見てる暇なんてねぇ!」

 こっちは今忙しいのが判んねぇのか? 柱に天井に架線まで?


「おいおい、振り落とす気か!」「落ちんなよ。止めないけど」

 架線とか電線とか。暗い所で『黒い線』なんて、絶対見えっこ無い。もし引っ掛けたらその瞬間終わりだ。

 揺れる機体の中で『安全紐』さえ付けていない黒田は、寧ろ『いつでも脱出可能な体制』を維持しているように思える。


「神田川から上に出ようぜ」「判った。行ってみよう」

 北も南も判らぬ。黒田が指さした方向にヘリを向かわせる。

 すると確かに秋葉原貨物駅の隣は神田川。そしてその上空には、『大空』が広がっているはず。しかし何かがおかしい。


「何か暗いし、もしかして屋根あんじゃねぇの?」「そうかもなぁ」

 人工地盤を作ったときに、東京は綺麗な升目に仕切り直された。

 理想郷と言っても良い。神田川は勿論、隅田川さえも日が当たらなくなってしまったのだ。水害を防ぐためとは言え無茶しやがって。


「そうかもじゃねぇ! じじぃっ! どうすんだよっ!」

「だったら、とりあえず蔵前橋通りに出るか。運転手さんあっちぃ」

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