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アンダーグラウンド掃討作戦(四百五十八)

 それにしても、随分と『目的地』が近いような? まだ三歩だが。

 黒田が立ち止まったのは機関車のすぐ後ろ。連結器を通り過ぎ、貨車から伸びる小さな梯子の前だ。短い脚を引っ掛けた。


「よいしょっとぉ」「じじ臭ぇな」「じじぃだからな」「ちっ」

 折角『嫌味』をかましてやったのに、余裕で笑ってやがる。

 ちょっとは悔しがってくれないと、嫌みを言う意味が無いではないか。黒井は黙って後に続く。コンテナ車に乗り込んだ。


 荷物は普段『コンテナ』であろうが、今日は違う。

 シートが被されている『ブツ』は『四角』ではなく、随分と変な形だ。こっち側は丸みを帯びていて、向こうの方は尖がり気味。

 ピンと張られたシートの一部をナイフでカットすると『空間』があるのだろう。黒田が頭を突っ込む。絶対『良くないこと』だ。

 まるで『誕生プレゼント』を、勝手に開封しているような?


「おい、じじぃ。勝手に開けちゃって良いのかよ。早く逃げようぜ」

 言ってから『しまった』と思う。振り返った黒田が『ニンマリ』と笑っているではないか。悪寒が黒井の背筋を駆け抜ける。

 黒井はその一瞬で、今言った全てが『フラグ』になってしまったと、気が付いたのだ。時既に遅しの感あり。


「ほらお前さぁ、前に『アパッチ欲しい』って、言ってただろ?」

 嬉しそうに何度も指さされれば、慌てて否定したくもなろう。


「いや、言ってねぇからっ! ぜってぇ、言ってねぇからっ!」

 周りの気配を気にせずに、語気を強めて言ってみせた。しかし黒田の笑顔に変化はない。寧ろ『嘘付けぇ』と、その口は言っている。


 シートの端を掴みながら、黒田は貨車の最後尾まで行っていた。

 そこで腰を屈めると、シートと貨車を結び付けている紐を、ナイフで切りながら歩いて来る。仕事が早い。直ぐにこちらへ来た。

 黒井は慌てるだけで、手伝うつもりなんてない。冗談御免だ。


「で、注文したんだけど、無くてさぁ?」「何だ、脅かすなよ」

 ちょっとだけ済まなそうに言っているが、信用は出来ない。黒田はお構いなしに、貨車の反対側へと消える。そっちも切るのだろう。

 言われて見れば、どうやら『シートの向こう』にあるのは『ヘリコプター』っぽいのだ。こっちが前、向こうが後ろだろう。

 攻撃ヘリの『アパッチ』なら、先頭が『ツン』と尖っているだろうし、横には小さな羽があって、ロケット弾とか。いやいやいや。


「悪いなぁ。どうも『品切れ』らしくてよぉ」「発注したのかよ!」

 あっという間に一周して、再びシートの下から黒田が現れる。

 こいつ、本当に中華屋から『発注』したのか?

 ピザの注文じゃあるまいし、電話口でちょっと喋っただけで、直ぐに発注出来る代物じゃぁ、ないんですけど!


 しかし黒井は、黒田に『発注した事実』を突っ込むのがやっとで、色々な疑問について、問い詰める程の時間を与えられていなかった。

 ニッコリ笑った黒田がシートを掴むと、グイッと引っ張りながら貨車から飛び降りたのだ。見えて来たのは『黒い機体』だ。


「お前、こいつ運転できるかぁ?」「あっ、コレェ。出来るかもぉ」

「マジでぇ? やっぱ本当に『日本国からの使者』なんだなぁ」

 機体が『ブラックホーク』だから嬉しくないのではない。断じて。

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