アンダーグラウンド掃討作戦(四百五十四)
今のは何となく『討ち入り』だったような気がする。
「うおぉぉ!」「行くぜぇ!」「やっちまおうぜっ!」
しかし態勢に影響は無かったようだ。『誰も聞いちゃいない』と言えるのかもしれないが。
まだ見栄を切っている山岸少尉を置いて、部隊が動き出していた。
「少尉殿、我々も行きましょうか」「おっ、おう」
隊長機の肩から落ちそうになっているのを、田中軍曹は見逃さなかった。しかしそこは腹心の部下。笑いを堪えているのは流石だ。
乗車用ハンドルを掴んで、シュルリと肩から降りる。定位置に付くとやっぱり落ち着く。
そこへ、たなっちときよピコがやって来る。自機に登場し、隊長機の左右へズザザッと展開して来た。山岸少尉は驚く。
二人のことだ。勢いに任せ、てっきり先へ行ったのかと思っていたのだ。左右を見て、よく見える方のたなっちへ声を掛ける。
「何だ。まだ居たのか」「いや、ちゃんと護衛しないと」
マジ顔で山岸少尉を左手で指し示したではないか。
確かに。『戦果』を挙げようと、我先に出発する自動警備一五型が大外から何機も追い抜いて行く。
両サイドに一人づつ掴まっている『正しい乗り方』から、『仲良し三人組』まで器用にぶら下がっている。
目指すはアンダーグラウンドに巣食う、レッド・ゼロの奴らだ。
大佐が陣取っている本部から、『敵本部』と目される場所の地図が送られて来ていた。何処で調べたんだか。
だったら『最初から教えとけよ』と言いたいが、それは我慢だ。
「激しい戦闘になりそうですからね。少尉殿は後ろからで」
ニッコリ笑ったきよピコが、自機の陰から顔を出す。
「済まんな。じゃぁそうするか」「何せ『司令官』ですからねぇ」
田中軍曹がヨイショする。やっぱり山岸少尉もその言葉には弱い。
本部に繋がったら、てっきり大佐が指揮を執ると思っていた。
しかしラッキーなことに、いや『不運』なことに、『お腹が痛い』との報告が。NJSの社員食堂で、昼飯に何を食ったのやら。
兎に角、指揮権は山岸少尉に留まったのだ。当然その後は『無線封鎖』という名目で、本部との連絡を絶っている。
「軍曹、貴様の機はどうした? 歩いて行くのか? 置いてくぞ?」
実は田中軍曹だけが自機に騎乗していない。山岸少尉が隊長機から落っこちると思ったから、駆け付けた所なのだ。
それなのに、酷い言い草である。しかし山岸少尉なら有り得る。
「置いて行かないで下さい!」「早くしろっ!」
すぐ傍にある自機に向かって走り始めた。しかし、まだまだ来る僚機に阻まれて、中々辿り着けない。タイミングを見計らって『すり抜けよう』とするのだが、山岸少尉達が待ってくれているかも気になってか、チラチラと振り返ってもいるからだ。
『ブーン!』『ブーン!』『ブーン!』『ブーン!』『ブーン!』
「うわっ! 何だっ!」「おぉ、何か一斉に飛んだなっ!」
調和型無人飛行体の一斉飛行が始まった。
『ブーン!』『ブーン!』『ブーン!』『ブーン!』『ブーン!』
予想外の事態に山岸少尉も驚く。コンソールを確認しても、下命はしていないはずなのに。勝手に飛び出したのだ。




