アンダーグラウンド掃討作戦(四百五十三)
「お前ら、充電は終わったかぁぁぁっ!」
「うおぉぉ!」「うおぉぉ!」「うおぉぉ!」「うおぉぉ!」
アンダーグラウンドに響き渡る鬨の声。地鳴りにも近い。
「さっさと戦闘を終らせて、勝利の美酒だぁぁぁぁっ!」
「うおぉぉ!」「うおぉぉ!」「うおぉぉ!」「うおぉぉ!」
山岸少尉の雄叫びが、部隊の士気を上げまくっていた。
勿論、たなっちときよピコの『独特の言回し』も、功を奏している。あっ、田中軍曹の耳打ちもだが。
「吉原でぇ、女も抱かせてy」「うおぉぉ!」「うおぉぉ!」
今の歓声はタイミング的に『食い気味』であった。トーンが三音上がったのに驚いて、最後まで言えてない。少々面食らっている。
しかしそれで、『しゅん』となってしまうキャラではない。
「一人につきぃ、『二人づつ』だぁぁぁっ!」
「うおぉぉ!」「うおぉぉ!」「うおぉぉ!」「うおぉぉ!」
「うおぉぉ!」「うおぉぉ!」「うおぉぉ!」「うおぉぉ!」
勘違いしないで欲しいが、これは列記とした『正規軍』の出陣式である。『アンダーグラウンド流』とでも付け足して置こう。
自動警備一五型の背中に乗り、肩に片足を掛けて恰好を付けているのが山岸少尉だ。左右満遍なく、一人一人の目を見ながら拳を突き上げている。それはもう素敵な笑顔で。
すると、初めて山岸少尉をご覧になった一兵卒も、至極喜んでいるではないか。沸き上がる闘志が声となって溢れ出す。
『この人のために戦おう』
叫び声を上げ熱き胸に誓う。暗闇を照らす一筋の明かり。我々の進むべき道を煌々と照らし続ける。そんな気にもなるものだ。
『なぁ、金髪居るのかなぁ?』『どうだろう?』
『馬鹿。花魁は黒髪だろぉ? 着物着てんだし』『判んねぇよ?』
『時代だしなぁ』『何だ。お前行ったことあるのか?』
『ある訳ねぇだろっ! そんな金、何処にあんだよっ!』
『喧嘩すんなよ。俺は別に誰でも良いぜぇ』『ゲヘゲヘ。だよなぁ』
盛り上がっている隊員達に向かって、両手を広げて前にだす。手をパタパタと上下に振って『静まれ』の合図だ。
話も夢も尽きないが、最高司令官である少尉殿が『静まれ』と言った以上、ここは一旦静まるしかない。一部『静まらない箇所』もあるかもしれないが、目を逸らしていれば大丈夫だ。
山岸少尉は部下が静かになると満足そうに頷いた。
そのまま手を下に降ろし、息を吸って『出撃!』と言おうとする。
しかし、手を降ろした所が『隊長機のトサカ』ではないか。尖がっている所で『チクリ』としてしまい、思わず『ビクッ』となる。
「いよっ! 隊長っ!」「日本一!」
透かさず飛び出した掛け声。たなっちときよピコだ。
山岸少尉は手の平が痛いのを我慢し、内心『でかした』と思いながら見栄を切る。ブルンとした手を勢い良く回して誤魔化した。
隊長機の肩の上。首も両手も大きく回しながら、歌舞伎役者の如くに。高校の芸術鑑賞会で見たきりなのだが。
「おのおのがたぁ。出陣でござぁるぅぅっ!」




