アンダーグラウンド掃討作戦(四百五十二)
「ちょっと、どっちが殺されても良いから聞いて欲しいんですけど」
熱いバトルが続いている所で、水を差す言葉が二人に届く。
富沢部長の言葉に反応したのは高田部長の方だ。ニッコリ笑って振り返る。
「えっ何? やっと『仲人』させて貰える気になったぁ?」
高田部長の趣味は『仲人』である。凄く迷惑だが。
「私は結婚してるわよ」「離婚したら良いじゃん」「そうだそうだ」
幾ら仲人が趣味でも、結婚している二人を離婚させてまで、する必要があるのだろうか。大いに疑問が残る所だ。
しかし何故か、本部長までもが賛成している。
理由は至極簡単で、今の旦那と富沢部長が駆け落ち同然で結婚をしてしまったからだ。
本部長は一人娘と『バージンロード』を歩けなかったことを、相当に恨んでいる。もう、孫と一緒じゃなかったら、旦那の奴を二百五十六回はぶっ殺している所だ。
「孫でも良いよ。今幾つ?」『ブンッ』「うわっ。いってぇ」
その質問は『執念』なのだろうか。本部長を指さしながらだった。当然のことながら、無言で蹴りが飛んで来る。
高田部長は富沢部長の方を見ながらも、当然予想していたのだろう。ローキックをすねで受けた。
しかし『すね当て』が入っていたのに、相当痛かったようだ。
「もう、あんたは大人しく死になさい」「親子で、ひっどいなぁ」
冷たく言い放たれて、高田部長は口を尖らせている。
しかし今は、馬鹿な上司に構っている場合ではない。止まってしまったシステムを、早く回復させなければならないのだ。
「ちょっと、パパァ」「何だよ」
今のは『裏をかいた攻撃』が、完全に決まる寸前だった。それを娘から頼りにされてしまっては、ピタリと止めざるを得ない。
「そもそも『電気』が、全部止まっているみたいなんだけど?」
床から抜いたコンセントを指さしての報告だ。
「そんな訳ないだろう?」「それが、そんな訳あるのよぉ」
本部長が折角答えたのに、あっさりと否定されてしまった。意味が解らなくなったときに聞くのは、当然、高田部長である。何しろ薄荷乃部屋の『電気配線』を最後に弄ったのは、奴なのだから。
「床の電気は、指示通り『東電』じゃないですよ?」
何処の電力会社から購入しているのかは、警備上の理由から最高機密だ。例えそれが、薄荷飴のメンバーだろうと教えられない。
ましてや今は、『部外者』までもが居座っているのだから。
あっ、大佐は寝ているか。いや駄目だ。奴お得意の『死んだふり』かもしれない。決して油断は出来ぬ。
だから、設計者の本部長を指さして責任を転嫁するのは『正しい』行為だ。すると本部長は、何やら『マズイ』と思ったのか、突然顔色を変えたではないか。
「もし『全部ダウン』てなことに、なっていると言うことは?」
「全機制御不能で、明後日の方向に飛んで行ってますかねぇ?」
高田部長が、笑いながら説明している。心配だ。




