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アンダーグラウンド掃討作戦(四百五十一)

 嫌みったらしい余韻を残して、富沢部長ブラックスワンは仕事に戻ってしまった。しかし出来ることは何もない。

 不思議なことに、何しろ全てのシステムがダウンしてしまっているのだ。照明は点いていて、耳を澄ませば聞こえて来るのは、エアコンの作動音だろうか。多分正常。だとしたら?


 富沢部長ブラックスワンは机の下を覗き込む。

 床に設置されているコンセントから給電している機器が、全て停電しているのではないだろうか。試しにコンセントを抜いてみる。

 そして違うコンセント。例えば壁にある奴。今更だが、キョロキョロ見回して探してみるしかない。


「いやぁ、本部長ペンギンの要求仕様に合うのが無くてぇ」

 司令官席では『不毛な言訳』が始まっていた。

 富沢部長ブラックスワンは『ソフトウェア担当』なので、部品の調達には関わっていない。

 しかしそれが、絶対に『嘘』であることは判っていた。


「何を言っているんだぁ? 金に糸目は付けるなって言ったよな?」

 ホントそれ。チラっと振り返った富沢部長ブラックスワンは、本部長ペンギンがそう言い出したら『絶対だ』というのを知っている。例えば『孫のランドセル』とか。絶対に触らせないけど。


「ホントホント。『まだ収穫時期じゃない』って言われましてぇ」

 何処へ何の調達に行ったときの話なのだろうか。

「はぁ? 何の収穫時期だよ!」「あぁ、ちょっと違ったかなぁ?」

 大分違うだろう。そもそも『嘘』と書いて『ホント』と読む。

 本当に『本当』だったら、ちゃんと漢字で『本当』と記すはずだ。

 それに、気持ちを込めて発音すれば、『どんな漢字か』だってイメージできる。ホントに。大体あの言い方。

 笑いながら顎をカクカクさせて。そんな仕草をするときの高田部長イーグルは、少なくとも『冗談』しか言わぬ。


『ズバッ!』「あぶねっ」『バッ!』「イイネッ」

 無言で本部長ペンギンの蹴りが飛んで来ていた。高田部長イーグルの笑顔を睨み付けたまま。それを笑顔で受け止めている。

 続いての正拳突きはいなしたが、受けた右手がちょっとだけ痛かった。鋼鉄のガードを仕込んでなければ、骨折は免れなかった所だ。


『ブンッ!』「うほぉい」『ダダンッ!』「もうちょい右っ!」

 突然ジャンプして回転したかと思ったら、案の定踵が襲い来る。

 それは流石に受けたら骨折すると思ったのか、上半身を逸らして避ける。『ギリギリで躱そう』なんて思ったら絶対ダメ。

 踵に仕込まれた『黒いブレード』は、強化プラスチックを刃のように砥いだもの。バッチリ艶消しされているので、暗闇だったら何も見えないままに絶命している所だ。


 喉元を通過した本部長ペンギンの足が突然方向を変え、不安定になった高田部長イーグルの足元を目掛けて振り下ろされる。

 勿論それも予想の範囲内。高田部長イーグルは『落とし穴』まで誘導しようと、ピョンピョンと飛び跳ねて誘う。


「あれっ、おかしいですねぇ」「何がだ!」

「落とし穴が、作動しないんですよねぇ」「こいつ、殺す気かっ!」

 今更『スッ』と足を引いて身構える本部長ペンギン。呆れた富沢部長ブラックスワンが、そろそろ良いかしらと声を掛ける。

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