表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1086/1534

アンダーグラウンド掃討作戦(四百三十八)

「あぁ。ブレーキかぁ」「らしいですね」「ムーッ、ムーッ!」

 何とも怪しい機関士である。咄嗟の判断をするでもなく、『ブレーキどれだっけぇ』の顔をして、それから顎に手を持って行く。

「ムムムーッ、ムムムーッ!」

 その後は『これだっけ? いやこれかなぁ』と、それっぽい物を一つづつ指さして行く。やっとブレーキハンドルを指さした。


「ムムッ! ムムムーッ!」「えっ、これぇ?」「らしいですねぇ」

 見てられなかったのだろう。猿ぐつわをされたままの機関士が、大きく頷いている。しかし黒田は騙されない。

 今まで散々『それが良い』と言われて来た。『そうすべきだ』なんて言って来た輩も多数知っている。『支持する』『応援する』『協力する』あぁ、全部聞いたことがあったなぁ。


『俺に任せておけ』

「それが一番、信・用・出来ねぇんだよっ!」

 機関士の目を見て何を思ったのか。突然大声で叫ぶ黒田に黒井は驚くばかりだ。何をそんなに怒っているのか。少なくとも機関士は後ろ手のまま天井を見て、『おぉ神よ』のポーズになってしまった。


「下り坂では加速だぁぁぁっ!」(ガコンッ!)

 黒田は勢いのままに加速を選択したようだ。慌てたのは黒井だ。

「いやダメでしょっ!」(ガコンッ! キキキーッ)

 如何にも素人らしく、ブレーキを操作したから大変だ。足元から物凄い金属音が響いて来たではないか。

 もっと慌てたのは機関士であろう。『おぉ神よ』なんてやっている場合じゃないと向き直り、黒井に向かって叫ぶ。


「ムムッ! ムゥームムームムムムムーッ!」

「馬鹿ッ! きゅーブレーキはやめろーッ?」

 人間、必死になれば通じるものだ。黒井が復唱すると、何と機関士が大きく頷いたではないか。黒井は黒田の肩を叩く。


「ムーム!」「そうだ!」

 言っていることが判って嬉しいのか、再び黒田の肩を叩く。

「ムゥームムムムムッ!」

「きょーとに行こうッ!」「ムムームッ!」

「聞きましたぁ? 俺、通じましたよっ!」

 黒井はニヤリと笑って顎を上げ、自身を指さして自慢げだ。

 それを黒田は忌々しく思うのだろう。聞こえるように『チッ』と舌打ちしたではないか。


「あぁ聞こえてたよ。『馬鹿』とはなんだっ! 『馬鹿』とはっ!」

 まるで軍人に戻ったかのような、怒れる上官の如く叫ぶ声。

 握り拳で運転台を『ドンッ』と叩いたショックで、ブレーキが些か緩い方へと動いてしまった? しかし黒田は気が付かない。


「ムムムーッ! ムムームッ!」「うるせぇ黙れっ!」「ムッ……」

 丁度、機関士の方を見ていて『一喝』したタイミングだった。機関士も怖くて黙る勢い。『よそ見運転』で良く言うよ。


 バタバタしている間に、貨物列車は坂を下り始めた。

「所で、ポイントをこっちに来ると、この先『上野』でしたっけ?」

「あぁ。正確には『寛永寺』な。世界遺産なんだぞぉ」

「もぉ。観光しに行くんじゃないでしょよぉ! その先は?」

「秋葉原で行き止まりだ」「はぁあぁ?」「ドーン! てなぁ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ