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アンダーグラウンド掃討作戦(四百三十六)

「知らないなぁ」「し、知らないで来たのかっ!」

 黒田がすっとぼけている。機関士が驚くのも無理はない。

「えっ、まじで?」「何だぁ? 知らないで付いて来んなよっ!」

 黒井もビックリだが、機関士はもっと驚いているではないか。

 実際この貨物列車には、陸軍が極秘に発注した物が積載さr


「良いから、ホレッ。ちょっと抑えてろ」「俺がですかぁ?」

 説明を途中で打ち切って、黒田が黒井に指示している。

 行先は何処だか知らないが、時計を見ている辺り出発時刻が迫っているようだ。予定時刻迫る。注意一秒怪我一生とは正に今。


「他に誰が居るんだよっ! 縛るか抑えるかどっちかにしろよ」

 流石に苛立ったのか、黒田が少々声を荒げる。

 そうは言っても、相手は善良な市民であるからにして。強盗じゃないんだから、猿ぐつわにロープでグルグル巻きにするなんて。


「だれかぁっ! おまわりsぅふぁsd;あせ」「静かにしろっ」

 交渉決裂と見た機関士が、いきなり大きな声を上げたではないか。

 黒田がもう片方の手で口を塞ぐ。後は目で威圧すると静かになった。勿論掴んでいる方の腕にも、相当な力を込めたはずだ。


 諦めて、用意してあったロープで機関士の腕を縛る。

 手早く足も縛った後は、手ぬぐいを取り出して口元を縛り上げた。これで暫くの間、大人しくして貰おう。


「良し。出発進行。腸閉塞進行」「ムーッ、ムーッ!」

 真顔で指さし確認をしている姿は、実に頼もしい限り。

「何かそれっぽいこと、言ってるだけじゃぁないですよねぇ?」

 いや、多分じゃなくても、言っていることは適当に違いない。


「当たり前じゃねぇかよ。ササやんに台本貰うの忘れちまってさぁ」

「台本って何の。いや『ささやん』って、誰ですかぁ?」

 余りにも適当なことをサラッと言う。これが黒田だ。しかも、言っていることの一体何割が『真実なのか』さえも判らない。


「佐藤機関士の前じゃ言えねぇなぁ」「えっ同僚?」「馬鹿っ!」

 親指で床に転がっている機関士を指しての発言だったものだから、黒井は驚いて振り返った。その後頭部を、運転席から手を伸ばし、振り被ってからの『パカン』だ。


「ムムムムムッ! ムムムー、ムンムムムンムムムゥ!」

「ちょっとぉ。佐藤さん何言ってんのか、全然判りませんよぉ」

「可愛そうにぃ。誰だぁ? そんな酷いことをしぃたぁのぉぅわぁ」

「酷いなぁ。人のせいにしないで下さいよぉ!」「場内侵攻!」

 既に貨物列車は動き始めていた。隅田川駅構内のポイントを渡って、本線までの信号が全て青になっている。だから黒田は忙しい。

 チラチラと機関士の方を見てはいるが、マスコンハンドルから手は離せない。黒井に指示を出して処理して貰うしか。


「多分、『何処へ行くんだ』だろぉ? 猿ぐつわ外してみろよ」

 貨物列車が動き出せば、ちょっと位大声を出されても平気だと、考えてのことだろう。それにしても変な指示だ。黒井は外してやる。


「佐々木だなっ! 佐々木ー、どの佐々木のことだぁ! ムムムゥ」

 パッと押さえて黙らせる。まだムームー言っているが問題ない。

「ほらぁ。余計なこと言うからぁ」「じじいのせいだろうがっ!」

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