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アンダーグラウンド掃討作戦(四百三十二)

 けたたましいサイレンが鳴り続けている。随分近いが何のサイレンだろうか。鮫島少尉が最初に思ったのは、そんなことだった。

 どうやら顔を引っ叩かれて気が付いたらしい。ぼんやりと映ったのは、白いヘルメットを被った男の姿。救急隊員だろうか。


「おいっ、気が付いたぞっ! 名前は言えるかっ!」

 何だ。薄っすらと開けた目と目が合って、開口一番はそれか。

 請求書を発行するにも『誰宛』で良いのか判らない。不満だが正しい判断と言えよう。が、『認識票』を見れば済むことなのに。

 誰に連絡するって? そんなの陸軍に決まっているではないか。


「大佐にっ」「動くなっ! 酷い怪我だ。寝たままで大丈夫!」

 起き上がろうとしたのだが、そこは全力で引き留められる。

 鮫島少尉は『カッ』と目を見開く。制止しようとする救急隊員の手を振り払おうと、右手を持ち上げようとした。


「いや作戦がっ」「もう幕は降りてるっ!」

 語気を強めた声。振り上げた右手も簡単に押し戻されてしまった。

 いつも通り力が入らないのは確かだが、それでも『民間人に押し戻されるなんて』と思う。そこでハタと気が付いた。


「まだ舞台に居るつもりなのかなぁ?」「意識の混濁あり?」

「あぁ。大分酷い。連絡頼む」「判った。これ頼む」

 呼ばれて駆け付けたもう一人の救急隊が覗き込み、相談を始めた。

 渡されたのはガーゼとか。取り敢えず止血をするための物だ。


「こちら三十三号車。怪我人の意識は戻ったが、混濁が酷い」

 無線で病院へ連絡しながら、心配そうに鮫島少尉を見ている。

『了解した。名前は?』「言えない」『重度混濁。火傷の程度は?』

「身体の左側が重度の火傷、ガラス片、右側は擦り傷多数」

 左右を覗き込むように確認した後は、その結果を無線で報告。


「俺は軍人だぁぁっ!」「あああっ! 大人しくしてぇぇ」

 鮫島少尉が暴れ始めた。再び起き上がろうとしている。しかし両肩を押さえ込まれてしまった。


『了解。出血はしているのか?』

「車から放り出されたときに、頭を打ったらしいが、今は?」

 一番酷い場所を報告。聞こえるように話したので判るはず。

「そこまで酷くはない! 乾いたのかなぁ」

 やっぱり相棒だ。包帯でグルグル巻きにされた頭部を見て答えが返って来た。道路に流れている血の量に比べ、意外と傷は浅いのか。


「ここは何処だぁぁぁ! これは演技じゃなぁいぃぃっ!」

 会話が聞こえていたのだろうか。『酷くない』の程度を、勝手に良い方へと捉えたのか暴れ始めてしまった。救急隊員も困り顔だ。

 無線のマイクを握り締めた救急隊員が、病院への報告もそこそこに、慌てて駆け寄って来た。


「東京ですよ! 東京。判りますかぁ?」

「判っているっ! 作戦遂行中なんだっ、邪魔をするとぉ」

 何度も抑え込まれたのが不満なのか、遂には脅すようなことを口走ろうとした瞬間だ。今度はガッチリと二人に抑え込まれる。


「あぁもぉ、だから寝てなさいってっ! 死んじゃいますよっ!」

「困ったなぁ。病院で鎮静剤打って貰おう」「だなぁ」「うおぉ」

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