表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1073/1530

アンダーグラウンド掃討作戦(四百二十五)

 息苦しくなって目が覚めた。しかし真暗ではないか。

 もしかして『目が開いていない』のかと思う。直ぐに否定。

 随分と静かだが現在地は多分戦場で、記憶が正しければ『東京アンダーグラウンド』のはずだ。

 故に『真暗なのは当然だ』と思いつつ、それでも『反応』とは恐ろしいもので、直ぐに手が動いた。腰付近にあった手を上に。


 目を擦ろうとして、動かした手が『何か』に当たった。顔に移動させる間も、顔まで持って来てもまだあるではないか。

 何だろう。判らない。慌てて両手を動かしてみても、ずっと『何か』に当たっている。正面を押すと足の方が引っ張られた。

 おいおい。何だこりゃ。『全身が包まれている』ではないか!


「ワーッ! 誰かぁっ!」

 息苦しいのは『密封されているから』に違いない。

 だとしたら叫ぶのは愚策。最初に思い出したのが『戦場』であったはずなのに、それは忘れて『絶叫』とは如何に。全く。

 栄えある帝国陸軍士官でありながら、この慌てっぷり。この体たらく。激しく両手両足を動かしてみるが、状況に変化なし。


「おいぃぃっ、何だこりゃぁっ!」

 だから『酸欠になりますよ』と言いたい。冷静になりましょう。

「出せっ! この野郎っ! クソがっ!」

 もう。貴方は死にたいのですか? それに口が悪い。

「開け『ゴマッ!』、開け『胡麻塩!』、もっと光をっ!」

 外から見ていると面白い。いや、知らないで見ていると、気持ち悪いかもしれない。何しろバタバタ動いているのは、『遺体袋』なのだから。普通、生きている人間がお世話になることはない。

 それが突然、内側からズバッとナイフで切り裂かれて、腕が見えたではないか。開いた所から今度は両手が見えてグイッと広げる。


「プハーッ! どうなってんだこりゃ」

 自分が閉じ込められていたのが『遺体袋』であろうことは、何となく判っていた。そこから勢い良く上半身を起こしたのだが、相変わらず暗い。やはりアンダーグラウンドだ。想定通り。

 起き上がろうと、遺体袋の外側に触れたであろう瞬間だ。


「うわあちぃ! 雨か? 何でっ?」

 鮫島少尉は、突然想定外の事態に見舞われた。

 手に『水滴』の反応があった瞬間、焼けるような痛みが走ったのだ。『溶ける』と思った瞬間、思わず手をはらって服で拭く。


 今まで雨に当たって『溶けたこと』なんてある訳ないが、ちょっとだけ実感できた。『手が無事か』は暗くて判らないが、いつまでもここにいたって仕方がない。いや、そもそもココは何処だ?

 スマホの懐中電灯。ある訳ない。腕時計のライト。チープカシオでした。ライトなんてありません。取られなかっただけ良かった。

 お気に入りの『ヘウエアー』を、戦場に持ち込まなくて正解だ。


 ポケットからヘッドライトを取り出して、明かりを手で隠してスイッチオン。良かった。こいつは使えそうだ。

 手の覆いを少しづつどかして、明るさを増して行く。すると、自分の付近が露わになって来る。


「山田、田中、中川、川島、島村、村山……。くそっ」

 鮫島少尉は、部下の名前で『しりとり』をしていた訳ではない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ