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アンダーグラウンド掃討作戦(四百二十三)

 腹に押し付けられていた銃口が、グイッと更に食い込む。

 このとき『銃剣』が装着されていたならば、幾ら巨漢の黒星と言えでも背中まで貫かれていただろう。

 しかし今『そんな例え』は必要ない。直径五・五六ミリの弾丸が腹を貫いて行くのも時間の問題だ。赤星は引き金に添えた人差し指に力を込め、赤山の指示を待っている。


「くっ黒田、俺はじじいのお気に入りなんだぞっ! 良いのかっ!」

 苦し紛れの一言だった。あんな奴と関わるのは御免だ。

 それでも、自分が生き延びるために出来ることは何でもする。普段から自分を中心にしてきた。何だったら地球の回転軸を、自分中心にしても良いとさえ思っている。周りが何だ。環境が何だ。

 水の一滴、空気の一粒までが、全て自分のために存在するのだ。


 すると『勢い』だけは伝わったのか、赤山の顔色が変わる。

 既に『返り脂肪』いや『返り血』を避けるため、一歩後ろに下がっていた赤山が二歩前に出る。いきなりゲンコツを振り上げたのだ。

 黒星にしてみれば『弾丸』も『正拳』も凶器には違いない。首を振りながら、思わず大声で喚き立てる。


「じじいが駆逐艦に来て助け出し、潜水艦、戦闘機と乗り継いでぇ」

「黒田『さん』だろうがっ!」「いてぇっ」

 手加減はした。だから頭蓋骨は陥没していないはずだ。

 怒りの沸点は不明である。しかし『赤き狼』の異名を持つ赤山を持ってしても、黒田には敬意を払わなければならないらしい。


っちまいますぅ?」「まぁまて」

 赤星も『赤山の意見』に賛成のようだ。小さく舌打ちをして我慢。

 実は赤星も、黒田を『じじい』呼ばわりして突っかかり、見事半殺しにされた経験を持っている。

 後で聞いたのだが、『赤山が止めなかったら死んでいた』とも。


 だから『さん付け』は最低条件だ。戦闘中ならいざ知らず、平時で呼び捨てとか有り得ない。ましてや『じじい』呼ばわりなんて。

 言っておくが『様』にしないのは、本人が嫌がっているからだ。


 そんな黒田が、『裏切り者である黒星』を気に入る訳がない。

 風の噂に『黒田は軍の裏切りにあった』と、聞いたことがある。

 酒の席で『どんな裏切りか』と聞いても、本人は笑いながら『昔のことだ』と言うだけで、決して口にはしないのだ。しかし目は鋭く怖い。そして冷たい。あれは未だに許してはいない目だ。


「本当なんだぞっ! 戦闘機なんてブオーンって宙返りしてn」

 今度は赤山からのビンタが飛ぶ。話は途中で打ち切られた。

「いてっ! 何だよっ!」「お前、喋り過ぎっ!」

 どうも黒星は、何でもペラペラと喋ってしまう性格のようだ。

 赤山は思わず溜息をして両腕を腰に当てる。どうやら黒星が『大物らしい』ということは判ったが、扱いには困る逸材とも思う。


「潜水艦から何だってぇ?」「……」「言えよっ!」「判った!」

 黒星は『喋り過ぎ』と言われたから黙っていたのに、再びゲンコツが見えておののく。周りに聞こえないように小声で話す。


「潜水艦から戦闘機に乗せられてぇ」「そこだっ」「えっ?」

「潜水艦から戦闘機に、どうやって乗るんだぁ?」「さぁ?」

 首を傾げながらの赤山に聞かれても、赤星だって答えようがない。

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