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アンダーグラウンド掃討作戦(四百二十二)

 黒星は撃たれるのを覚悟する。理由なんて判らない。

 分厚い脂肪があれば『死亡は免れるのではないか』と、一瞬飛び出た志望は動機にすら薄い。両手を上げた所で奴らには無駄なのだ。


「お前、陸軍の人間か?」「違う違う違う違う違う!」

 赤山が右手で『待て』を指示していた。忠実なる『犬』の赤星は、その合図が出ている間は大人しくしているだろう。黒星の懸命なアピールにも動じる様子はなく、じっと『撃て』の指示を待っているようにも思える。今の質問に『そうだ』と答える奴はいないのだ。


「こいつ、『白井』の正体が『石井』だって言ってました」

 じっと黒星を見据えたまま、赤山に報告だ。赤山が振り返る。

「誰だ? 白井って」「ホワイト・ゼロの医者ですよ」

 納得して直ぐに頷く。世話になったことはないが『ホワイト・ゼロが使う偽名』は『白から』と決まっている。


「そいつが、本当は『何』だって?」

「石井『少佐』だって。さっき『コイツ』が言ってました」

 顎を上げながら見下すように言い切ると、グッと銃口を押し付ける。赤星も黒星が『誰』だか判らなくなって、『コイツ呼ばわり』に変わってしまったのだろうか。いやいや『宮園』だと知っている。


「じゃぁ『石井』って野郎は、『医者』じゃなかったのか?」

「いえ、白鳥先生が『元軍医だ』って言ってました」

「『女神』がかぁ?」「えぇ」「じゃぁ、決まりじゃねぇかぁ」

 赤山は何度も頷いて、再び黒星を睨み付けた。怒りが込み上げる。やはり黒星は『裏切り者』なのだ。

 赤星の報告全てを鵜呑みにして信じる訳ではないが、それでも『整合性』が取れているのは間違いない。


「でも、俺は『陸軍の回し者』じゃないっ!」

 手を上げたまま首を横に振って必死のアピール。何だったら片足を上げたって構わない。なぁ『片足上げろ』って言ってくれよっ!

 赤星の手元、『引き金』と『目』を黒星は何度も交互に見ている。下手に首も動かせない状況なだけに、目だけをギョロギョロさせて。


「証拠は?」「あの医者、俺のことを知らなかったじゃないかっ!」

 そんなの証明するのが困難であることは、この場にいる者全員が承知の助だ。赤山は黒星の目をジッと見ている。


「そうなのか?」「えぇ。確かにそうですね」

 後ろから聞こえて来た赤星の答えに、赤山は大きく頷いた。

 黒星は『助かった』と思う。掲げていた両手を少しだけ降ろす。


「どうかなぁ?」「やっぱり『怪しい』ですよねぇ」「あぁ」

 首を傾げながら、再び黒星へと迫る赤山。黒星はビンッと両手を真っ直ぐにして『服従』の意思表示だ。口元がブルブル震えだした。

 しかしこんな状況下でも、赤山は決して油断することはない。素早く黒星の蹴りを警戒。後は下から上へと舐めるような視線移動だ。


「それにコイツ『黒松さんの存在』を、認めちまいやがってぇ」

 それを聞いた赤山がパッと振り返った。驚きの余り口を丸く開け、目も丸くしているではないか。似合わない甲高い声で叫ぶ。


「トップシークレットなのにぃ?」「えぇ。軽く扱い過ぎなんすよ」

 再び黒星を見つめた赤山の表情が冷たい。小さく鼻息も。

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