アンダーグラウンド掃討作戦(四百二十)
赤山が指さしたのは二機の自動警備一五型だ。
いやこれを『二機』と言うには多い気がする。どちらも『下半身』しか存在していないからだ。
「これを見てくれ」「はい。あぁ、交換ですか」
片方は上半身が『スポンッ』と綺麗に外れた感じで。きっと上半身が壊れたので外されたのだろう。横丁にはラッチまで見える。
赤山はそのラッチをカチカチと動かして、『俺が外したんだぜ』をアピール。いや黒星にしてみれば『だからどうした』なのだが。
すると赤山がもう一台の方を指さした。黒星もそちらを見る。
「こっちは完全に逝っちゃってる」「そのようですねぇ」
後から指さした方は、上半身が完全に破壊されているようだ。
腰を屈めた赤山が、ぽっかり空いた胴体の中を覗き込んでる。しかし残ったのは『外枠』だけで、中身は何もない。
もしかして、残っていた部品を全部取っ払ったのかもしれないが。
「この違いって、何だ?」「えっ? 『違い』ですか?」
黒星にしてみれば、どちらもぶっ壊れた機体に過ぎない。
しかし赤山も、黒松から自動警備一五型について、『分解整備』まで教わったエキスパートである。勿論、製造元であるNJSから『整備ライセンス』の取得はしていないが。
「いや、良く見てくれよ」「はぁ」
「こっちは『合体型』で、こっちは『一体型』だろう?」「あぁ」
説明を受けても黒星は『何だ』と首を縦に振るだけ。しかし赤山は、『合体型』を見るのは初めてだ。
今回のように『上半身がぶっ壊れた』奴については、交換が可能な『合体型』の方が扱い易いに決まっている。
「一体型の方が『量産型』なんですよ」「そうなの?」「えぇ」
黒星は両方の内部を順番に覗き込み、小さなシリアルナンバーを確認して頷く。赤山は『そんな所に』と少々驚いている。
「やっぱりそうですよ。こっちが『試作機』です」「判んのかよ」
にっこり笑って報告。しかし赤山は笑っていない。そんな赤山の顔色を窺って、赤星が直ぐに凄む。
「適当なこと、言ってんじゃねぇぞ?」「いや、言ってねぇし」
何か『理不尽な脅し』にも大分慣れた気がする。黒星は肩を竦めて冷静に言い返す。そのまま覗き込んだ場所を指さした。
「プロトタイプの『P』が、先頭に付いてるでしょ?」「どれどれ」
確かに『合体型』の方は、先頭に『P』の文字が。確認のため、今度は『一体型』の方を見ると、先頭は『A』からだ。
赤山が顔を上げると、シリアルナンバーを指さして問う。
「『A』って何だ?」「それはただの『ロット』ですよ」「何だ」
特に意味は無いらしい。きっと何か改良が加えられたら『B』になるのだろう。何度も改良が加えられて『P』になったら?
多分その頃は『試作機』なんて寿命で、廃棄されているから心配ない。そもそも『コイツの台数』は、活躍次第なのだから。
「試作機の方が、面白そうなのになぁ」「合体するからですか?」
「そうだよ。変形とかしないのか?」「いや変形はしないですけど」
「何だ。しないのか」「代わりに『砲塔』を乗せた奴ならあります」
「いやそれじゃ『戦車』じゃんかよぉ」「ソコなんですよねぇ」




