アンダーグラウンド掃討作戦(四百十九)
考えながら歩いている内に、レッド・ゼロの拠点に来ていた。
分解された自動警備一五型が取っ散らかっている。どうやらこっぴどくやられてしまい、修理中のようだ。
仲良く黒星と肩を組んで戻って来た赤星に気が付いて、赤山が手を休めた。顔を上げ、持っていたスパナを回しながら手を振る。
まだ考えている黒星を放置して、足早に駆け寄る赤星。隊長の赤山に報告すべき事項が沢山あるのだ。
「おう。無事戻ったか。診療所はどんなだった?」
怪我人を運んで行けと命令したのは赤山だ。流石に『肉弾戦』は怪我人が増えてしまった。しかし反省はしていない。
陸軍側にも『相当な被害』が出ていたのは明らかだ。
「ダメですね。『白井』って怪しい奴に狙われてます」
笑顔で報告。すると意外にも赤山の表情に焦りは見えない。
「そっかぁ。まっ、怪我人だしなっ。一人二人はしょうがない」
赤山にしてみれば、まだ『助かりそうな奴』を診療所に押し込んだに過ぎない。言わば『基本的人権の尊重』である。
「暫くは戦闘に使えませんし。大声出されても困りますからねぇ」
そんなことは赤星にも十分判っていて、『痛い』だの『何だ』のと騒ぎ立てる奴らを、部隊から隔離したと思っているのだろう。
それを聞いて赤山もにっこりと笑った。
「囮にはなるかぁ?」「いや、ダメなんじゃないですかぁ?」
さっきの『基本的人権』は、あっさりと投げ捨てられてしまった。
非道で名高い『五番隊』に、怪我人は不要ということか。しかしそれさえも否定して見せた赤星も、なかなかに酷い奴だ。
「あっでも隊長」「何だ?」
「白井って奴、本部でも好き放題やってるっぽいですよ?」
親指でホワイト・ゼロの本部を指さした。すると流石に『それはマズイ』と思ったのか、赤山の表情が曇る。
「じゃぁ、殺ったのか?」
笑顔の赤山が親指を立てて、首の前でクイッと横に振る。
そこまで判っていたのなら赤星のことだ。既に始末を付けて来たに違いない。赤星を割と好きにさせているのも理由の一つ。
「それが隊長ぉ。こいつが邪魔しやがってですねぇ」
「えぇぇ、俺ぇ?」「お前だよ。お前が押したんだろうがよっ!」
慌てる黒星に追い打ち。背中をドンと叩いてやる。
「おいおい黒星。『邪魔だけは絶対すんな』って言ったよなぁ?」
右手に持っていたスパナを左手に持ち替えると、今度は赤山が黒星と肩を組む。と言うか、右手でグッと引き寄せた感じだ。
「邪魔なんて、してないですよぉ」「良いから良いから。面貸せ」
言訳も虚しくグイグイ引っ張られて行く。凄い力だ。これは物陰に連れて行かれて、スパナで『ゴチン』って奴に違いない。
「これなんだけどよぉ」「はぁ」「ちょっと見てくれよ」「はい」
赤山が黒星を引っ張って来たのは自動警備一五型の前だ。上半身と下半身が分離された状態になっている。
「ちょっと、判んねぇことがあるんだけどよぉ」「何でしょう?」




