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アンダーグラウンド掃討作戦(四百十三)

「じゃぁ止めるよ」「これ以上怪我させてどうしようって言うの?」

 大人しく『お見舞いの品』をしまった。何処で拾って来たのやら。

 その辺で倒れている奴のポケットでも、漁って来たのだろうか。

 ニヤニヤ笑っていた赤星が、突然真顔になって問う。


「その『怪我をした奴ら』は、無事に退院して来たのかい?」

 疑り深い目だ。何を言っているのだろう。白鳥はブー垂れる。

「当たり前でしょぉ? ちゃんとした治療を受けられたんですから」

 両腕を腰に当てがって、首を縦に振りながら答えた。上の病院に連れて行ってくれたのだから、少なくともココよりはマシなはず。

 しかし赤星はそれを聞いても疑り深く問い続ける。


「全員?」「いや、全員じゃないけど。結構な数よぉ」

 こんな所で『名簿』なんて、ある訳がないじゃないか。

 軍隊じゃないから『認識票』なんて素敵な物もない。だからギャーギャー騒ぐ怪我人が、物みたいに急に大人しくなってしまったら。

 東京湾で『魚の餌にする』って、誰かから聞いた。怖い怖い。


「何か死にそうにない奴が、優先的に連れて行かれたみたいだけど」

 赤星でさえ一応気を使って『小声』で聞く。しかしその程度では、白鳥に気を使っていることにはならなかったらしい。

 むしろ逆に、怒らせてしまったようだ。


「だって、地上まで歩いたりするんでしょ?」「まぁね」

「私だって『あんなに長い梯子』なんて、御免だわよ」

 確かにそう。人工地盤は海抜三十一メートルの場所にある。

 だから『荷物用エレベータ』が使える『ココ』が、診療所拠点として用意されたのだろう。それは判る。


「退院して来た奴って、先生も会ったことある? お礼に来たとか」

 苦笑いで『チョン』と白鳥を指さしながらの問いに、白鳥は『フッ』と吹き出した。この男は『私』を誰だと思っているのか?


「無いわよ」「何だ。意外と『人望』無いんだねぇ」

 バッサリ言い切った白鳥を、赤星は薄ら笑いで指さした。しかし白鳥も負けてはいない。今度は腕組みをして胸を張ったではないか。


「お礼を言われたくて、『こんなこと』してる訳じゃないのよ?」

 立派な心構えだ。流石『女神』と言われるだけのことはある。しかし赤星にしてみれば、『間抜けな女神』にしか思えないのだろう。


「じゃぁ『退院した』ってのは、どうやって知ったんだい?」

「馬鹿ねぇ。そんなの『白井先生』からに、決まってるじゃない」

 顔を顰めて答えた。腕を解き今度は両手を腰に添えている。


「何? 『この間の○○さん退院した?』って、先生が聞くの?」

 赤星の質問は終わらない。いい加減『次の患者』を診たいのだが。

 一体赤星は、何の権利があって仲間の治療を邪魔するばかりか、白井医師のことを疑っているのだろうか。


「そうね。そんな風に聞くときもあるわよ」「それだけ?」

「いやあんた、白井先生の『何』を疑っているの?」「いや別に」

「白井先生から教えてくれることだってあるわよ」「どんな風に?」

「どんな風に? どんな風にって、ねぇ?」「だからどんな風に?」

 言われて白鳥は首を捻る。右手を顎に添えて一言。

「そうねぇ『治療が終わったら、逃げられちゃったよぉ』とかぁ?」

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