アンダーグラウンド掃討作戦(四百十一)
M16で小突かれながら歩く。まるで『捕虜』みたいだ。
「何で」「うるせぇ。歩け」「もしかしたら」「良いから行けっ」
黒星は振り返って『文句』を言いたい。未練だってタラリンチョ。
しかし赤星がそれを許さない。廊下を抜け、扉もさっさと開けないと後ろから『ドスン』と撃たれそう。
そうしたら、目の前に現れた怪我人をギュギュっと奥へ押しやって、三人分位の隙間を空けないといけないだろう。
『えっ、何してんの? そのまま撃つの?』
新しく現れた患者の診察をしていた白鳥が、思わず手を止める程の迫力。診察を受けていた怪我人も『何だ?』と思って首を振る。
目が点になって固まった。いやね。これ以上怪我したいとは誰も思わない。仲間が銃で小突かれていても、見て見ぬふりだ。
多分、本当に撃ったりはしないだろう。良く見れば引き金に人差し指を掛けていないではないか。
「表で待ってろっ!」「ブヒィィ」(バタンッ)
最後はケツを蹴られ、良い感じにドアを押し開けて姿が消えた。
『蹴るなよっ!』「うるせぇ。逃げたら撃つからな(カシャン)」
白鳥の目の前で赤星が立ち止まっていた。外にいると思わるる黒星と絶賛会話中である。と思ったら、突然銃を構えたではないか。
『撃つなよっ! まだ逃げてないだろう!』
多分両手を『ブンッ』と振り上げている。
何故なら銃口が外を向いていて、黒星がちゃんと見ているかは知らないが、引き金にだって人差し指を添えているからだ。
怖くなった白鳥は治療を止め、両肘を曲げて無抵抗の意思表示。
すると、それを見た怪我人も両手を上げる。いや骨折した左手を固定して貰ったばかりなので、左手は指先だけを上にピンッと。
ニヤッと笑った赤星が、ゆっくりと銃口を上に向ける。そして目線を白鳥の方へ。と思った瞬間、銃口を外へ向けたではないか。
『何だよっ! 逃げねぇよっ!』「そのまま手を上げてろっ」
余程黒星が信用ならないのか、それとも冗談か。いや冗談だとしても質が悪い。ニヤニヤ笑いながらも狙いは付けたままだ。
そんなのを目の当りにした白鳥は、降ろし掛けていた両手を再び『バッ』と上に上げざるを得ない。そのまま待機だ。
『危ねぇからこっち向けんなよっ!』「じゃぁ、片足上げてろっ」
相変わらず強気の黒星だが、声だけは必死なのが切ない。加えていやらしく笑い続ける赤星の『無理難題』が降り掛かるとは。
白鳥からは何も見えないが、多分黒星は言われた通り『片足を上げた』のだろう。赤星が『フッ』と吹き出した後、真顔になり『やればできるじゃねぇか』と小さく呟くのが聞こえる。
それがこちらを見た瞬間だ。白鳥の上から下までを舐めるように見て、再び『フッ』と吹き出したではないか。
「何で先生まで、片足上げてるんですかぁ?」「いや、だって」
白鳥が両手を上げた上に、右ひざをめい一杯曲げて片足立ちしている。しかし片足で立つのが苦手なのか、フラフラしているのだ。
こちらだって必死なのは同じ。『足が付いたら撃たれる』と思えばこそ。だから『チョン付け』している仕草は何ともはや可愛い。
「あぁ、これぇ? 撃ちませんよぉ」『ハァ……』
赤星はゆっくりと銃口を上に。白鳥もホッとして楽な姿勢へ。
「所で先生ぇ、『野郎先生』について、聞かせてぇ」「ハイッ!」
白鳥は両手を上げていた。今度は腕を伸ばして真っ直ぐにだ。




