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アンダーグラウンド掃討作戦(四百七)

「何だ。まだ生きてるじゃん」「結構、瀕死ですよ」

 三人目のミイラ男は文句を言ったのだろう。口を尖らせたのかもしれないが良く判らない。何しろ片目を残して、包帯でグルグル巻きになっているのだから。

 両手両足に包帯が無いのを見るに、他は元気なのだろう。自らエレベータから出て来て、深呼吸までしている。


「これで全員だな」「どうも、お待たせしました」

 白学が確認するとミイラ男が頭を下げる。休憩中の患者を起こして『さぁ移動』かと思いきや。


「黒星は何か言ってたか? 次に乗るとか」「黒星? あぁあぁ」

 白学が『閉』を押すべきか迷っている。その返事次第だ。

 このままエレベータを下に降ろし、もし黒星が乗ったら『ぶっ壊れる』と思ったからだ。そうなると他の『マネキン』にも……。


「あぁ、奴の件ですか?」「うん」

「だったら、問題ないかと思いますよ?」「え、そうなの?」

 ミイラ男が『閉』を押して、エレベータを下に送ってしまったではないか。声の調子から、多分『笑っている』と思われる。

 白蔵は実物を見ていないから『あっそう』な感じでいるが、実物を見て、必死さと何か変な臭いを体感した白学は信じ難い。


「フッ、歩きながら話しますよ。急ぎましょう?」「そうだな」

 余程『面白いこと』があったのだろう。当人も歩き始めた。吹き出しながら勿体ぶるとは。


 歩くのに全く問題がないのか、ミイラ男がスタスタと先頭を歩く。しかし道は知らないので、『こっちかな?』とか、方向まで確認してくれている。索敵まで兼ねての行動だろう。好きにさせよう。

 もし誰か来たら、相手が『ギャー』と叫び出すに違いない。

 ちらちらと『まだか』と振り返った姿は、例え『味方』と判っていても『ちょっと怖い』ことには変わりないのだから。


「私が乗る前に、白井先生が見に来たんですよ。なぁ?」

 ミイラ男が片手の男に確認を求めると頷いた。

「あぁ。俺が出発するときにだったな。『乗れるか?』って」

 白蔵が急に立ち止まって、親指で後ろのエレベータを指す。

「追加の患者を連れて来たとか?」「いや、そうじゃなくて」

 両手を振って否定すると、『何だ』と思って白蔵も歩き出した。


「何しに来られたんだい?」「あの『デブ』のことですよ」

 人権とは。聞いた白学に言えたものでは断じてない。

 だからその指摘は置いといて、聞きたいことを問うだけだ。


「先生が『お兄さんは黒松さんですか?』って聞いてて。なぁ?」

「そうなのか!」「いや、俺は聞いてないっす」「そうなのか?」

 白学の『言い方』が面白い。同じセリフなのに、片方には『感嘆』し、もう片方には『疑問』を投げ掛ける。

 本人だけが気が付いていないようだが、周りは笑っている。

「そんときはもう『ピシャーッ』って閉まっちまいましたからぁ」

「そうなのかぁ。で、何て?」「いや、だから俺は聞いてないっす」

 少々大げさに答えた白学だけが、俄然興味深く問う。白蔵にはそれが『わざと』に見えたので、一助として一緒に笑っている。


「怖い人が来て『コイツは黒星だ』って、連行されちまったんです」

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