アンダーグラウンド掃討作戦(四百六)
奴は一番の『レアキャラ』ではないか。遂にその姿を捉えた?
コンピューターへのハッキングから、最新兵器の改造までこなすエンジニアで、ブラック・ゼロの『影の支配者』とも噂が。
人前には滅多に現れず、その姿を見た者は誰も居ないと言う。
一体どこから現れたのかさえ不明である。
気が付いたときは『噂』だけがあり、公式な記録について軍は勿論、民間にも一切の記録がない。
一説によると『存在しないのでは』と言う輩も出る始末だ。
「やっぱり知ってるんですか?」「そうだなぁ」
片腕の男が嬉しそうに聞く。白学は少々はぐらかした。
一旦頷いて、それから何て言おうか迷う。陸軍にしてみれば、特に『邪魔な存在』であることは確か。
そんな男かもしれない奴が、このエレベーターの下にいるとなれば、ここは何とかしてとっ捕まえた方が良い。
「医療機器を直して貰ったこともあったなぁ」「それは凄い」
勿論これも口から出まかせだ。しかし『それっぽい事実』として受け入れられた模様である。こうして『噂』が広まっていくのだろう。が、今の『嘘』を耳にすることは、絶対に無いと断言出来るが。
「NJSのマザーコンピューターにも、侵入したんだろ?」
「あぁ。でもそれで止められてたら、今頃こうなってねぇよ」
怪我人同士で話を始めた。片足の男が自分の足を指さしている。
「だよなぁ。本社に行った奴ら、どうなったのかなぁ」
ちらりと左手を見たが、そこには時計も腕もない。肩を竦めた。
「結構な重装備で行ったそうだから、いい加減止まるだろ?」
「でも、『全然止まる気配が無い』って、言ってたジャンか」
白学と白蔵は黙って二人の会話を聞いている。
「あいつら『AI』を搭載してるらしいから、ある程度はだろ?」
「でも隊列組まないって言っても、単体で俺達より強いしさぁ」
今度は片腕の男が、亡き左手を覗き込む。
「やっぱ、本社突入は失敗したんじゃねぇの?」
「民間のビルに、手榴弾と自動小銃を持って行ってかぁ?」
「玄関に『ロボ』が居たって、おかしくないだろう?」「あぁ」
白学には意味がさっぱり判らない。やっぱりこいつらは『テロリスト』だ。自分達のことしか考えていない。
だからちょっとだけ『ざまぁ』とは思う。それに、どちら側に被害が及んだとしても、実に喜ばしい限りだ。
何しろ『NJS』と言えば『苦い思い出』がよみがえる。
今となっては『手出し無用』の危ない企業。そんな企業の『代名詞』になってしまった。こいつらは何も知らない?
命知らずなのか、それとも単なる無謀か。どちらでも良い。
最早『命運も尽きた』とも言えるし、逆にNJS側に甚大な被害が出れば、こちらの行動もし易くなる。『もっとやれ』だ。
「来ましたぜ」『着きましたっ! (ドンドンドン)』「おっと」
片手の男に言われて、白学は慌てて腕組みを解く。
直ぐに『開』を押すと、出て来たのは『ゾンビ男』である。
「いやぁ、死ぬかと思ったぁ」「おわぁぁっ!」
思いがけない一言に、白蔵は驚くばかりだ。




