アンダーグラウンド掃討作戦(四百五)
陸軍の演習に忍び込んだのが『ブラック・ゼロ』だと聞いた。
奴らは基本二人組で行動すると言う。だから演習に割り込んで来た奴らもそうだった。散々暴れ回った挙句、包囲網を突破。
軍用列車をジャックして逃走を図るも、揃って川に追い落とされた。その後は行方不明となっている。
正式な報告書上は、それで『死んだ』ことになっているが、陸軍はそう見てはいないだろう。
何故なら、一緒にロストした『調和型無人飛行体』二機が、落下地点はおろか、川下からも駿河湾からも、どこからも見つかっていないからだ。
詳しくは知らないが、何処かに流れるような物ではないらしい。
「ブラック・ゼロの『黒田』ってのは有名なのか?」
白学は片手の男に聞いてみる。すると白学の顔を見て驚いているではないか。白学はそれを一瞬で理解する。
「あいつ、貴重な備品を、ゴッソリ持って行きやがってさぁ」
適当な嘘で誤魔化す。それが意外と思ったのか表情が和らぐ。
「あぁ、黒田さんならやりそうだ」「そうだろぉ?」「なぁ」
笑いながら答えたので、すかさず白学も笑顔で相槌。すると片手の男が、片足の男の方へと同意を求めている。
白蔵にも白学の『意図』が判ったのだろう。『ホワイト・ゼロにしてみれば、困った奴なんだ』と、渋い顔で肩を竦めて見せた。
すると片手の男が、笑いながら言うのだ。
「あの人さぁ、どっから仕入れて来たのか『Cー4』設置してよぉ」
後は手と表情で『ドッカーン』を表現して押し黙った。
片足を指さしているのを見ると、どうやら『同士討ち』なのか?
「仕掛けた罠をうっかり踏んじまって、この有様さぁ」
あららやっぱり。笑っているが『良く生きていたな』と感心しきりだ。量をケチったのだろうか。
「味方のを、自分で踏んじまったのかぁ?」「ちげぇますよ」
事情を知らない白蔵が苦笑いで聞くと、実はそれも違うらしい。
「後ろから飛び乗った『ロボ』が、踏んじまいやがってさぁ」
悔しそうに言っているが、聞いた白蔵は勿論、『ロボって?』とアイコンタクトを受けた白学さえも、意味が全く判らない。
どうやら時代は『変革期』を迎えているらしい。ここはとりあえず『大変だったねぇ』と、一旦同意しておこう。
「じゃぁ黒星さんは、黒田さんの『お仲間』なのか?」
白学は、多分絶対確実に『違う』と思いながらの問いだ。
報告書に記載された内容によると、もう一人も『元軍人』である。
しかも『同類』。戦闘機乗りの『やヴぁい奴』と同じ名前で、そいつは少し前に『行方不明』となっているのだ。
「それは絶対に違いますよ。なぁ?」「いや、俺は知らねぇ」
片足の男は『実物』を見たことがあるのだろう。片手の男は『黒田の噂だけ』知っているようだ。
「じゃぁ、誰だぁ?」「さぁ。ブラック・ゼロは俺達も良くはなぁ」
白学が片足の男の方を向いて聞いたのだが、色良い返事はない。
すると後ろにいる片手の男から知見が耳に届く。
「もしかして、あの人が『黒松さん』なのかなぁ」「何だって!」




