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アンダーグラウンド掃討作戦(三百九十九)

「何だよ。『無理だ』って言うのか?」

 強気な態度だ。腹を叩くと脂肪が波打つ。誰からも答えがない。

 当たり前だ。白学が前に出て、自由な方の手で扉を開けた所だ。

「誰から乗る?」「俺から行くよ」「あぁ。気を付けてな」

 患者同士で相談が始まった所である。しかしそれも直ぐに結論が出ていた。どうやら先頭は『片足の男』のようだ。


「乗ってみないと、わっかんないだろうがよっ!」

 強引に割って入るが、それを白学が片手で簡単に阻止。一歩も動けなくなってしまった黒星の足だけが、気持ちと共に空回りだ。


「止めろっ! 殺されたいのか?」

 何だ。白学も『危険人物』だったのか。凄んで寄せられた顔の迫力が、明らかに素人のものではない。黒星は直ぐに思い出す。

 同じ目をした『危ない奴』に出会ったことがある。鋭く光るその眼差しは、何かの使命を帯びた現役の軍人そのものだ。


 だとしたら、一体どうすれば良いのか。

「体を折り畳んで」「はい」「良し。入ったな」「何とか」

 このまま引き下がるしかないのだろうか?

「良し。じゃぁ上に送るぞ」「はい。お願いします」

 目の前で扉が閉まる。閉まってしまう。俺が乗るはずだった『楽園への扉』が。ちきしょう! 何か手が。足でも良い。


「ちょっと待って下さい!」「んん?」

 声がしたのは意外にも『エレベータ内』からだ。

 白学は『閉』を押して、次の者を『どちらにする?』と、指を振っていた所。重量オーバーの黒豚は論外である。

 そこへ突然、後ろから声がしたので振り返った。閉まり掛けたドアに手を添えるが止まらない。直ぐに『開』を押した。


「これ、『上』に着いたらどうすれば?」「どうすればって……」

『開ければ良いだろう』と言い掛けて判った。これは開かない。

 本来この『荷物用エレベータ』は乗用ではない。だから中からは、開けられない仕掛けとなっているのだ。


 勿論、今から改造するのには間に合わない。今は一刻を争う緊急事態なのだ。先ずはメーカーの営業を呼んで『見積もり』からの、予算確保に向けた上層部への説明、及び工事の発注か。

 いや待てよ? もしかして『競争入札』にするための『告知』を必要とする事業案件かもしれない。資材部に要相談だ。

 そうなると増々予算審議に時間が掛かり、営業開始は早くとも『三年先』の春になるが。果たしてそれで良いのだろうか。


「俺が上に行きましょうか?」

 真っ直ぐに手を上げて『立候補』したのは黒星だ。

 さっきまで死んだ魚のような目をしていたのに、今は自分が助かろうと必死になって、目を輝かせているのが判る。この際、少しでも『善人面』をして、得点を稼ごうとする魂胆が見え見えだ。

 白学は『お前がか?』と言い掛けて言葉に詰まる。


「お前、誰だ? 見た所『戦闘員』ではないが」「俺ですかぁ?」

 良くぞ聞いてくれました。実は私『誘拐された民間人なんです』と言おうとしてこちらも言葉に詰まる。グッと悔しさを噛み締めた。

 本来『楽園いおうじま送り』だったのを『拉致して頂きありがとうございます』な、立場であることを思い出したのだ。

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