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アンダーグラウンド掃討作戦(三百九十六)

 横になっている者の隙間に足を踏み入れる。

 正直、足の踏み場もない。だから患者にも、出来れば『ご協力』頂きたい所だ。実際白学は、目が合った者に指で右へ左へと『方向』を合図しながら歩いていた。それで何とかなるものだ。


 体を少しだけ動かして隙間を空けている。ただでさえ痛いのに、分厚い靴底で踏まれたくはないのだろう。必死なのが判る。

 中には顔をしかめて頑張ってはいるが、どうも足が思ったように動かない者もいるようだ。そんなときは仕方がない。

 踏まないよう、足を体の下へと潜り込ませる。ゆっくりとだ。


「いててててっ」「すまん」「気を付けてくれよ」

 まだ喋る元気があるなら多分大丈夫だ。白学はバランスを取っていた右手だけを顔の前に立てる。それで許してたもう。


「お前は移送する。起きろ」「はい」「良いなぁ」「頑張れよ」

 元気そうにしているが、昨日まで有った左手が無いようだ。

 周りの患者に見送られて、スクッと立ち上がったものの、衝撃で左手が痛むのだろう。右手を添えてしかめっ面だ。


「歩けるか?」「何とか」「裏口から上に行くルート……」

 言い掛けて思い出す。自分は長い梯子を降りて来たのだが、片手で梯子は無理なのではないかと。両手が無ければ辛かろう。

 

「エレベーターなんて、無いですよね?」

 振り返って白井に聞く。白井も患者を見て気が付いた。

 医者として『助かりそう』な者を選定したつもりだが、『脱出できるか』までは考慮していなかった。

「そんな高尚な物、無いですよね?」

 苦笑いで白鳥にパス。しかし意外にも白鳥が指さしたではないか。


「えーっと、倉庫の方にありますよ?」「えっ本当?」

 倉庫は白井がさっき入って来た扉の方に、確かにあった記憶が。

 ちらっと覗いたことはあるが、中に入ったことはない。治療中に必要な備品は、コールすれば向こうからやって来たからだ。


「えぇ。荷物用ですけど。良いですよね?」「それ、動くの?」

「昨日使ったので、大丈夫だと思いますけど」「おぉ」

 一気に安堵の表情へと変わる。ご指名の兵士はその場で待機していたが、頷いて患者の間を歩き始めた。凄く嬉しそうだ。


「体育座りして乗って下さい」「あっ、ちっちゃい奴?」「はい」

 白鳥が片足を上げてアドバイス。真下にいた者は『何か』が見えたかもしれないが、今はそれ所ではないだろう。

 それとも『あらぬモノ』が見えてしまったのだろうか。ぐったりとしてしまっている。『元から』なのかは不明だ。


「行けるな?」「任せて下さい。既に『畳んでます』ので」

 不自由な左手を振りながら男は苦笑いだ。白学は頷く。

「次はお前だ」「やったぁ」「良いなぁ」「俺はどうです?」

 白学が指名した者が立ち上がる。顔も頭も包帯でグルグル巻きになっていて、まるで『ゾンビ』のようだが、片目だけは辛うじて機能しているようだ。周りに別れの挨拶しながら歩き始める。

 白学は足元でズボンを掴まれていたが、それを簡単に振り払った。


「あとはお前だ。立てるか?」「俺は足をやられてるんで……」

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