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アンダーグラウンド掃討作戦(三百九十五)

 後から現れた男。悲惨な患者達を見て、思わず口を押えた。

 白衣は着ているものの『医療関係者』ではないらしい。それともまだ若いので、『内科の研修医』だったりして。

 いや、内科だろうが肛門科だろうが、授業で『解剖』の一度や二度は経験して(マーッ)。いると思わ(マーッ)。


「大丈夫かね?」「いいえ」「おいっ!」「すいません」

 白井にケツを『パシッ』と叩かれて走り始める。行先は白井が渋い顔をして指さしていた。『御手洗』と書かれた扉の方だ。

 男は自己紹介も無しにすっ飛んで行き、あっさり退場と相成った。登場から退場まで、実に短い役どころに白鳥も呆れ顔だ。


「彼、大丈夫ですか? あらら、やっぱりダメみたい……」

 嘔吐する派手な音が遠慮なく響く中、白鳥が一応問う。

 白鳥は二人のやり取りを聞いて、既に苦笑いとなっていた。今の男が『新人』だと確信していたし、もしかして『医者』ではなく、ただの『サポート要員』なのだろうとも予想する。まぁ当たりだろう。しかし人手は多い方が良いので、この際誰でも歓迎だ。


「本部では、平気だったんですけどねぇ。ちょっとここは刺激が」

 白井は言訳までして済まなそうにしている。気の毒な程に。

『おかしいなぁ』と首を捻り、姿が消えた御手洗と白鳥を交互に見るばかりだ。出て来るまでに、一体何往復するのだろう。


 そこまで心配そうにする白井の姿を、今までに見たことがない。

 きっと白井が軍医だった時代の後輩なのだろう。心配なのも心配無いのも判ったので、もうこれ以上は聞くまい。

 しかし『チョイ役』にしては、『イイ男』をキャスティングしたものだ。待つこと三十秒。男は口元を拭きながら戻って来た。


「失礼しましたっ! もう大丈夫でありますっ!」

 再び軍人らしく敬礼だ。それは白井に対してであったが、直ぐに白鳥に向き直って、再度敬礼。白鳥は困って白井の方を見た。


「彼は『白学』君ね。ちょっと経験不足だけど、頑張り屋だから」

 白井が苦笑いで白学を紹介する。すると『上官から自己紹介されてしまった』と反省したのか、息を思いっきり吸い込んだ。


「白学でありますっ!」「ど、どうも。白鳥です」

 白鳥に従軍経験はない。だから本職の軍人は苦手である。

「あぁ、貴方が『女神』と噂の白鳥先生でありますかっ!」

 嬉しそうに『二つ名』を叫ばれても、本人は全く『自称』していないので困るばかりだ。再び白井に助けを求めている。


「白学君! 静かにっ。ここは『病室』なのだからね?」

「失礼しっ! ました」「……」

 どこまでも『軍人気質』が抜けないのか。忠告に対する返事も大声だった。しかし、白井が一瞬見せた『鷹の目』に気が付き、『ました』は凄く小さな声にトーンダウン。

 白鳥は『大根役者』を前にして、可笑しくなってしまった。むしろ白井の方が気を使っていて、苦笑いで白鳥に頭を下げている。

 白鳥は勿論、許すしかない。さっきから白学を庇おうとしている白井と言い、笑うのを必死に堪えるばかりだ。


「白学君、仕事だよ? 先ずは彼と彼と彼。上に移送して」

「はいっ!」「大尉っ」「あっ、すいません。お任せ下さい」

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