アンダーグラウンド掃討作戦(三百九十)
「大分討ち取られたらしい。損害多数だ」「じゃぁ、撤退ですか?」
田中軍曹の目がパッと見開かれたのを見て、山岸少尉は思わず拳を振り上げた。防弾ガラスを叩くと鈍い音がする。手が痛い。
しかし山田軍曹の顔は瞬時に歪み、防弾ガラスが無ければ『当たったであろう場所』を痛そうに擦っているではないか。
直ぐに『痛くない』と気が付いたのだろう。笑顔に変わった。
「まだに決まっているだろう!」「だと思いましたっ!」
山岸少尉の自信たっぷりな顔を見て、田中軍曹は思い出す。
今の山岸少尉は『全権』を握っている。つまり、『総員突撃!』と下命できる立場なのだ。人生で初の経験だろう。
言葉通り、『まだまだやり足りない』に決まっている。
「配下の全機をここへ集めろ」「はい。え? 全機ですか?」
「そうだ」「動く奴?」「当たり前だろ」「壊れてるのも?」
「部品取り位にはなるだろう。全部集めろ」「はいっ」
田中軍曹は自分のコンソールに向かって打鍵し始める。
先ず打ち込んだのは『友軍部隊の隊長達』に向けてのメッセージだ。すぐ傍に姿は見えるのだが、コンソールに向かっている。
田中軍曹『やっほー。充電するから、全機集めろってさぁ』
きよピコ『まじで? 今配置に着こうとしてるけど戻り?』
たなっち『ていうか、まだ充電あるっしょ。弾なら判るけど』
きよピコ『少尉殿はまだやる気だしょ』たなっち『癒えてる』
田中軍曹『いや充電するって言ってんの少尉殿だし』
きよピコ『読めない字おつ』たなっち『うるさい。黙れ』
田中軍曹『喧嘩砂。やる気だから充電するらしい』
田中軍曹『電源車読んだ。呼んだ』
たなっち『へー』きよピコ『ほー』田中軍曹『はー』
きよピコ『ひー』田中軍曹『いや良いから』たなっち『ほー』
田中軍曹『たなっちヤメロ』きよピコ『はー』
田中軍曹『ちょときよピコ』きよピコ『まだダメって言われてない』
田中軍曹『はー二回目だから、きよピコの負け』きよピコ『mjk』
たなっち『ださ』きよピコ『黙れ』田中軍曹『ちょおまいら』
田中軍曹『兎に角戻せ。充電しる』
「もう呼んでるのか?」「あぁ今、あいつらに連絡してます」
突然山岸少尉からの『リアル確認』があって、田中軍曹は慌てる。
山岸少尉が『自部隊の方』をグルリと指さしているのが判って、それも焦りの原因となる。
コンソールを指さして説明したら、山岸少尉は頷いて御園との会話に戻った。充電する順番について確認しているのだろう。
「電源車が来たら、ケーブルが届く位置に配置済です」「そうか」
やはりそうだ。早く来ないと後回しになってしまう。チラリと振り返った山岸少尉と目が合って、田中軍曹は真面目に頷く。
たなっち『うさぎにつの戻せ』きよピコ『ウサギに角ねぇし』
たなっち『そういううさぎも居るのかも知れぬ』
きよピコ『居ねぇ方にZ2』たなっち『荒川に沈んだ奴?』
きよピコ『それカタナ』たなっち『ドッボーンww』
田中軍曹『何の話だよww。てか辞書引け』
たなっち『軍曹もどりんぐ』きよピコ『おかー』
田中軍曹『飯の順番が後になっても良いなら、待機でもOK』
たなっち『すぐ戻します!』きよピコ『すぐ戻します!』




