アンダーグラウンド掃討作戦(三百八十六)
電気を吸い取られる方の自動警備一五型が連れて来られた。男が取説を見ながら電源ケーブルを繋ぐ。
小窓からピコピコと操作して、マイケルへの充電が始まった。
「余り使わない機能ですよねぇ」「あぁ」
何とか接続し、無事に充電が開始されたのを確認。男が山岸少尉に報告する。今のはどちらかと言えば『言訳』に近いだろうか。
待たされている山岸少尉にしても、任せた以上は文句は言うまい。
て言うか、自分では出来ないので、山岸少尉は苦笑いするのみ。
「バッテリーパック毎、交換したらどうなんだ?」「あぁ」
二人で小窓を覗き込んで進捗を確認すると、何だかいつもの充電より時間が掛かりそうだと判ったのだ。
男も同意しているが、それはそれとして困っている顔である。気まずそうに頭を掻いた。
「ちょっと重たくって、外せないんですよ」「これぐらい?」
「いえ、もっと」「えぇ? じゃぁ、こぉんぐらい?」
山岸少尉が両手で『バッテリーの大きさ』を表現している。
男は上官として大丈夫なのかと思いながらも、ここは笑うしかない。何だかこの小隊は、『楽しそう』と思えるから不思議だ。
「いやいや、それだと機体からはみ出しますよ」「そうかぁ」
やっぱり『変わった人だ』と男は思う。それでも『大丈夫か?』とは思わない。上官が来てくれただけで、良かったではないか。
基本兵器は『二個一』や『三個一』が出来る。
ちょっと壊れたからと言って、直ぐに使えなくなってしまっては困るからだ。戦場に新しい部品が、直ぐに供給されるとも限らない。
現場では『有る物』で何とかすることが求められる。
見れば居並ぶ自動警備一五型の様子がおかしい。
今日、実戦に初投入したばかりなのに『お揃い感』がないのだ。
特に『変ったオプションが付いている』でもない。
「これ、右手と右手じゃないのか?」「そうなんですよ」
山岸少尉が指さしたのは、左側にも右手が接続された機体だ。
人間の動きを真似して作られた関節なので、取り付け後は肘も前に曲がるようにするのが普通だろう。しかし右手を左側に取り付けたからだろう。仕様通り後ろへと曲がってしまっている。
「左側から集中砲火を浴びまして、この有様です」
「それで、軒並み左腕が破損したのかぁ」「えぇ」
山岸少尉は首を伸ばし、並んでいる機体を覗き込む。
どうやら魔改造されたのは、一機だけではないようだ。
「こう、コントロール出来るのか?」「はい。何とか」「へぇぇ」
左腕をグルングルン回しながらの質問に、男は苦笑いで頷く。
山岸少尉は感心したように相槌を打つと、腕を振るのを止めた。
「きよピコ、こんなの使ったことあるかぁ?」
後ろで『マイケル』の世話を始めているきよピコに聞く。
きよピコが整備を中断して顔を上げた。すると山岸少尉が指さした機体を見て、思わず笑い始めたではないか。
「少尉殿ぉ、それ両方とも『左手』になっているじゃないですかぁ」




