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アンダーグラウンド掃討作戦(三百七十七)

 ナイフ戦に『コツ』があるとしたら、それは相手の『目の動き』をしっかりと追うことだ。赤星はそう考えていた。

 訓練で赤山と戦ったときにそれを実感する。

 正確には『ナイフ戦』ではなく赤山は『素手』だったのだが、今はそれを言うまい。赤星は前を見て集中している所だ。


 迷彩服を着て鉄兜を被った男。目をギラつかせている。

 右手に持ったナイフは順手。腰を前に曲げ、バランスを取るように両手を肩幅より少し広くしているが、左手は開いていて何もない。

 緊張しているのか、舌を出して『ベロリ』とやって見せた。


 何故か違和感。どう見ても、確かに『服装』については上から下まで『帝国陸軍の兵士』そのものである。

 知り合いに『元軍人』は沢山いる。レッド・ゼロの幹部連中は大体そうだ。奴ら、いや、彼らによると、本来『軍服』については、『退役したら返却』とのこと。しかしそれは『支給品』のみだ。

 意外にも『自費調達』する者もいて、それは退役後は当然『お持ち帰り』となる。だとしたら、レッド・ゼロのメンバーは全員『凄くお洒落』ということになってしまうのだが。


 目の前の男。また『ベロリ』とやっている。どう見ても『お洒落』とは程遠い。きっと奴のは『支給品』なのだろう。

 だとしたら、例え『血染め』にしてやったとしても、クリーニング代は自腹にはなるまい。遠慮なく『ブスッ』とやらせて貰う。


「今度こそ『グサッ』とらせて貰うぜぇ」

 女々しく『オノマトペ』まで否定して来やがった。細かい奴だ。

 二メートルの所にまで近付いて、やっと『違和感の正体』が判る。


「やっぱり『きよピコ』か。こんな所で」

 二人は昔、『千住大橋の下』で会ったきりだろうか。

 遠い記憶だが、確か赤星は『鉄パイプ』を、対するきよピコは『塩ビ管』を持っていたような気がする。それでも問題は無かった。

 何故なら二人は『お友達』ではないし、むしろ『向き合う仲』だったのだ。ここで今更『和解』も無ければ『笑顔で挨拶』もない。


 しかし口元だけは『笑っている』ようにも見えた。

 丸い物を握り締め、互いになぐり合えば『丸く収まる』時代は疾うに過ぎ去った。懐かしきあの時代『気に入らない』は、攻撃するのに『正当な理由』として認められていたのだ。

 今の『笑み』は、両者にしてみれば『余裕を見せている』と言うべきものだろう。しかしそれは『生者のみ』が残す言葉なのだが。


「お前、『軍の犬』になったのか」「違う」

 赤星はきよピコの目を見て『断言』してみせた。勿論『嫌味』で言っている。対するきよピコも、真っ直ぐに赤星を睨み付けていた。

 返事を聞いた赤星は小さく『フッ』と笑う。そして今度は、更にゆっくりとした口調になって問う。質問形式の嫌味として。


「じゃぁ、『誰の犬』になったんだぁ? えぇ?」

 挑発するように『ピッ』と顎を上げる。勿論、きよピコの目を見たままだ。するときよピコも、不敵に笑ったではないか。


「山岸少尉だ」「……」

 今思い出した。『きよピコ』って奴の『噂』を。

 確か『勘は良いが、相当変わっている奴』だった気がする。

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