アンダーグラウンド掃討作戦(三百六十九)
『タンッ』『タンッ』『タンッ』『タンッ』『タンッ』『タンッ』
無防備な背中を狙う。躊躇するような教育は一切受けていない。
名乗りを上げるなんてこともしなければ、相手の首を取りに行くこともしない。倒れた仲間の所に走り寄る者がいれば、遠慮なく追撃の手を加えさせて頂く。弾はまだ沢山あるのだから。
一人二発づつ、合計六人を倒していた。周りは暗闇。
迂闊にも、自動警備一五型のライトをオンにしているのが悪いのだ。
一見『移動する鉄の塊』の陰に、隠れているつもりなのかもしれないが、それは敵が『前から来る』と判っているときにするものだ。
幾ら『強力な火器』があろうとも後ろが『がら空き』では、撃たれてしまっても仕方がない。今一度『陣形』について研究してみてはどうだろうか。例えば『背水の陣』とか『本陣』とか、色々ある。
そもそも攻撃を『ロボ任せ』にしているのなら、照明なんぞ不要だったはずだ。殺されたくはないけど、殺している所は見たい。そんな心理が働いたのだろうか。
ちょっと高尚過ぎて、意味が判らない。
もしそれが『人間の好奇心』とやらに分類される類の事象だとしたら、戦場で数ある死因の割合として、かなりの数になろう。
『タンッ』「気が付かれたか?」『タンッ』「全然!」
無防備に撃たれて行くレッド・ゼロの一味。全く『こちらの位置』に気が付いていないようだ。
まぁ『気が付いたとき』には、もう『弾丸』が目の前に迫っていて遅いのだが。流石に弾丸は見えていても、避けられまい。
「少尉殿、こちらでしたか」「おっ、来たか。ありがとう」
兵士が五人現れた。今まで自力で走って来たのだろう。
コンソールを持っていた奴なんて、『ハァハァ』言っちゃっている。しかし少佐が礼の次に掛けた言葉はキツイ一言だ。
「ライトを消せっ! 見つかるだろうがっ!」「はい」
こちらも『再教育訓練』が必要だろうか。
だから『突入前にはライトを消せ』と、いつも言っているだろうが。来たばかりだが良く見ろ。暗闇で明かりを照らしているとどうなるかを、今証明したばかりだ。照明だけに。
ライトを消した部下を一人、山岸少尉が立つ窓際へ呼び寄せる。
そっと窓の外を指さして『見ろ』と指示。すると部下は、窓の外を無警戒で覗き見た。しかし直ぐに『外の状況』が判ったのだろう。
危ないとばかりに、頭を勢い良く引っ込めた。
そのまま壁際に、ビッタリと張り付いてしまっている。
「二人、ここに残れ。援護を頼む」「はい」
笑顔で頷く。本当に大丈夫だろうか。御身可愛さに『援護射撃』を、サボったりはしないだろうか。一抹の不安が残る。
「少尉殿は、前進するのでありますか?」「あったり前だろぉ」
返事をしながら『コンソール』を指さした。何を言っている?
自分の『ロボ戦隊』が先へ行ってしまっているのに、制御しに行かないでどうするのだ。貴様の『操縦資格』は『飾り』なのか?
「ほれっ、重いから、たなっち頼む」「おぉっと。お任せ下さぁい」




