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アンダーグラウンド掃討作戦(三百六十五)

『タタタッ! タタタッ!』「ヒャッハーッ!」

 当たっているのか、いないのか。判るべくもないが、窓に向けて乱射していることだけは確か。勿論、たなっちが、である。

『ピンッ』「ほぉれ、もう一つ食らえぇっ!」

 その窓を目掛けて、きよピコが手榴弾を放り込む。連携プレイだ。


「たなっち、無駄弾撃つんじゃn」『ドガーンッ』「うわぁっ」

 苦情は全て吹き飛んだ。何だろう。田中軍曹が居ないと、こいつ等を『止める奴が居ない』というのが良く判った。


「えぇっ? 何ですかぁ?」『ミシミシミシッ』『ガラーン』

「おぉっ? 見て下さい! 潰れてしまいやしたぜぇ」

 手榴弾一つで、脆くも上層部分が崩れ始めた。

 元々『廃墟』なのだ。傷んでもいただろうし、年数だって経過していている。最早『無いよりはマシな壁』に過ぎない。


「ゲホッ! ゲホゲホッ! きよピコ! あんまり投げるなっ!」

 その割に、解体によって出て来る『埃』は余りにも多い。

 たちまち視界不良になって、笑顔も何もかもが包まれて行く。思わず口を押さえ、後ろへと走り出していた。


「少尉殿、見ましたぁ?」「いやぁ、今のは凄かったですねぇ!」

 自画自賛か。煙幕の中から飛び出した三人の内、二人は真っ先に後ろを指さした。角度は違うが『崩れた廃墟』のことで間違いない。


「暫くお掃除してないんだから、あんまり埃を立てるなっ!」

 口を塞いだまま山岸少尉のお小言。しかし二人は笑顔だ。

 手で覆われており『お顔の表情』は判らないが、声の調子と目の角度から『笑っている』のは判る。戦略に問題はない。


「敵さん、全然居ませんねぇ」「撃っても来ませんけどぉ」

 埃はまだ舞い上がっている。そこへ、機械軍団は躊躇なく進んでいく。まるで『埃なんて関係ない』と言わんばかりだが。


「分断されるぞ。ちょっと止めろ」「大丈夫ですよぉ」

 山岸少尉が顔を覆いながら親指で合図。しかしきよピコが、それを笑って否定。右手をヒョイと縦に振ったではないか。

 普通の部隊なら、そこで『貴様!(以下略)』と始まってしまう所であろうが、歴戦の勇士である山岸少尉は違う。

 きよピコが指さした『廃墟の方』に振り返った。『?』である。


「何が? どうした?」

 直ぐに振り返ってきよピコに聞く。すると笑顔のまま、一度降ろした右手を再び水平に持ち上げて、廃墟の方を指さしたではないか。


「左翼に、俺の配下を回り込ませておきました」

「あぁ、なるほど。でかしたぞ」

 合点である。ニッコリ笑ってきよピコを褒める。

 どうやら隊列が無駄に長くなるのを見越して、一部を左側の路地に回り込むよう『行動プログラム』を組んだのだろう。


「俺だって、右翼の路地から回してますよぉ」「おぉ。サンキュ」

 たなっちが逆方向を指さした。『山岸少尉に褒められたい』と、そんな想いが透けて見える。こちらも同じく『行動プログラム』を組んでいた。それでいてたなっち本人は、山岸少尉の護衛と。

 両翼に隙無し。見事な連携と陣形である。言動とは裏腹に。

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