アンダーグラウンド掃討作戦(三百六十)
頭をコツンとやられて、その上から叱責まで食らう。黒星は控え目に睨み返すが『確かにそうだ』と思い直す。
申し訳ない思いが廻り、赤星の機嫌が直るように頭も下げた。会釈程度の、ちょっとした礼であるが。それ以上は意地でも嫌だ。
「あのぉ。『こんな物』しか有りませんがぁ?」
すると赤星の後ろから、そっと差し出された物が。一目見て黒星はそれが『何か』を理解した。ちらっと赤星の方を見ると……。
どうやら赤星も、それが『タブレット』だと判ったようだ。
『何だ。あるじゃねぇかよ。『タブレット』がよぉ』
誰にも聞こえないように言った『つもり』だ。
『なぁ?』
当然のことながら赤星の目は見ない。声掛けしたのは差し出した男の方。目を見てせめて『相槌』でもと思ったのだが、スッと目を逸らされてしまった。男が気にしているのは、やはり赤星の方だ。
赤星が横から手を伸ばす。黒星が受け取る前に、タブレットを奪い取った形だ。その勢いはまるで、力任せに地面へと叩きつけそうな感じ。『最初から無かった』と、言い張るのだろうか。
「ほれ。これで説明しろ」「それって、タブレッうっ」
苦々しい顔だが、黒星の腹を目掛けて差し出したではないか。
「いいや。これは『こんな物』なっ?」「えぇぇ……」
説明を強引に打ち切られた上に、タブレットの名前まで変えられてしまった。差し出した男は急に笑顔になって、『そうですそうです』と頷く始末だ。こいつ、犬みたいに『尻尾』があったら、ブンブンと振っているに違いない。
取り敢えず『説明』を始めることにする。
ご丁寧に『電子ペン』まで付いているし、それより何より『最前線』に、連れて行かれるのだけは御免蒙りたい。
黒星は慣れた手付きで図面を描き始めた。結構上手だ。
「ここに『上蓋』があって、爪を入れる『小さい窪み』があります」
タブレットにしては小さい部類だろうか。それを大勢が取り囲み、静かに覗き込む。赤山も赤星の隣に割り込んで来た。
全体図から線を余白に引っ張って、そこに『拡大図』を描く。
「こっちから見て『赤』ランプなら飛べない状態で、緑はダメ」
「飛ぶのか?」「ローターが回ってなければ。多分止まってます」
「回り始めたら?」「足で踏んじゃって下さい」
「大丈夫なのか?」「パワーが弱ければ、それで飛べないかと」
質問をした赤山が頷いて黙る。説明再開だ。
「上蓋の蓋のネジ①②③④を外して、ここの隠しネジ⑤は触らない」
「何で?」「Cー4が起爆しますよ?」「あぶねぇなぁ」
「でも、電源OFFの状態で、どうやってCー4が起爆するんだ?」
「それは『ココ』に、自爆用の電池が別に組み込まれてるんですよ」
「何だよそれ。器用なことしやがって」「設計した奴アフォだろ」
今頃誰が『くしゃみ』をしているか、判りそうなものだ。
「蓋が取れそうな『ユルユル』の状態にしてぇ、こう、何とか」
シュシュっと投げる素振りをして見せる。自分では実際無理だが。
「背中を狙って投げれば良いと?」「良く狙って頂ければぁ……」
顎を前に出すように、苦笑いでアドバイス。結構重いけど頑張れ。




