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アンダーグラウンド掃討作戦(三百五十三)

 冗談は置いといて、宮園課長アルバトロスは仕方なく歩き始めた。今更『長い梯子』を登る勇気はない。

 目を細めれば、暗闇に目が慣れれば、所々空いた穴から漏れる光で、見えないことは無きにしも非ず。


 足元に気を付けて上を見上げれば、星の代わりに見えるのは『非常灯』の明かり。ポツンポツンと見えたり、見えなかったり。

 緑色なので、随分と現実離れした『星空』である。方角を確認することにしか使えない。ここは『月』が是非とも必要だが望み薄。

 とても期待できそうにない。人通りのない交差点を通過。

 一応『左右を確認』してみたが、車の一台も通らない。


『パーンッ!』「おわぁっ!」

 閃光が光る。思わず腕を上げて顔を守った。眩しい。

 しかし、一キロ以上は離れているだろうか。かなり遠くであることは確かだ。音だって、そんなに驚く程の大きさではない。

 方角的に『あぁ、今日は隅田川花火大会だったかぁ』と思う程度。まぁ、この世界の『隅田川』はもう存在しないので、花火大会の名前も変わってしまっているのだが。残念。

 それに今のは戦闘の証。何れにしても風情の『ふ』の字もない。


「ちっ、何だよ。脅かすなよ。クソがっ」

 転がっている空き缶を蹴ろうにも、足元はもう見えなくなった。

 一度明るくなった世界を体験すると、再び暗闇に慣れるまでに時間だけを要する。その間は歩けない。安全のため、暫しの辛抱だ。


「何で俺が、いちいち報告に行かないといけないんだよぉ」

 溜息だ。パソコンに向かって文字を打ったり、ピーチクパーチク喋っていれば話が済むようなことなのに。

 それを今時『歩いて行け』だなんて。一体いつの時代に逆戻りなのか。冗談じゃない。宮園課長アルバトロスは再び歩き始める。


 いっそのこと『脱出のチャンス』と思えなくもない。

 そうだ。今が『絶好の機会』ではないか? 監視もいないし、鎖で繋がれている訳でもない。全くの『自由行動』だ。

 問題は『右も左も判らないこと』だけ。いや『無一文』もか。

 それに、三時間後には確実に必要となるであろう『食料』はおろか、一時間後に欲しくなるであろう、『水の一滴』すらも所持してはいなかった。黒田のジジイめ。それを判って『放流』したな?

 クソッ。ムカつく。絶対そうに違いない。


 まぁ、仮に『ハーフボックス乗り場』が突然現れたとしても、乗るのは躊躇するだろう。むしろ乗ったら最後。行先は判っている。

 絶対に『NJS独房フロア』へ逆戻りだ。高田部長イーグルの奴が設定変更して、待ち構えているに違いない。クソッ。

 家にも帰れないし、東京を脱出することも出来ない。このまま『アンダーグラウンドの住人』として生活するしかないのか……。


 宮園課長アルバトロスは左の耳たぶを弄り始めた。

 プニプニとした触り心地を楽しんでいるようだが、それだったら腹の方が余程プニプニとしている。掴んで揺らすことも可能だ。

 そうではない。耳たぶの内側、頭皮と頭蓋骨にある『取り出し不可のICチップ』を恨んでいるのだ。

 生まれて直ぐに埋め込まれ、上から触っても判らないのだが。


「こいつのお陰で何も出来やしないぜっ! 誰だよ考えた奴ッ!」

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