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ガリソン(九)

 普通『気象庁』からの中継と言えば、台風が接近しているとか、地震が起きたときとか、外国から押し寄せる津波の予想の時だ。

 しかし今回は、そのどれでもなさそうだ。

 琴美は何だろうと思った。一体何を中継しているのだろう。


「あぁ、今日も天気予測、外したからな」

「そうよ。聞いてよぉ。もう。自転車病院に、置いて来ちゃったのよぉ。晴れるって言ってたのにぃ」

 琴美は目を丸くして父と母を見る。そしてもう一度テレビを見た。


 もしかしてこの記者会見は、『天気予報』を外したお詫びの会見なのだろうか? 琴美はテレビ放送に集中する。

 しかし、何だろう。父母の会話が煩くて、テレビで記者が喋る声が良く聞こえない。


「気持ち悪いから、アニメにしなさい」

 そう言ったのは父だ。何ですって?

 それでも琴美は、最後までテレビの音を一生懸命拾おうする。

「はーい」

 優輝が喜んで、チャンネルをアニメに戻した。

 こやつ、人の話を聞いていないやふに見えて、そういう所は反応が早い。仕方ない奴め。将来は大物になるだろう。

 琴美は録画ボタンを押したかったが、録画ボタンは既に押されていることに気が付いた。

 うーん。だめだこりゃ。お手上げだ。


「優輝、宿題はちゃんとやったのか?」

 テレビに夢中の優輝に向って、父が声を掛けた。

「うん」

 優輝はテレビを見たまま答えた。棒読みではあるが返事は偉い。

 宿題をちゃんとやるなんて、流石我が弟。琴美は弟を見直した。


「何日分目までやったんだ?」

 次に発せられた次の質問は、琴美の想定を越えたものだった。

「三日分だよ」

 一方の優輝は、琴美の思いに反し質問の意図が判ったらしく、的確な答えを出した。今の時期に、その答えは合っているの?

「お、がんばってるなぁ」

 合っていたようだ。父がそう言ったのと同義ではないか。

 琴美はもう一度父と弟の顔を見て、考えるのを止めた。そしてカレーの続きを食べる。

 いつもと同じ味のするカレーだ。いつもと同じ。


「じゃぁ、ネコロンダーのDVD観ても良いぞぉ」

「えっ、借りて来てくれたの!」

 優輝の目がたちまち輝く。それもそうだろう。

 父が借りてきたDVDは優輝が夢中の戦隊物で、去年の映画がDVDになったものだ。テレビCMを見た時から観たい観たいと言っていた。


「私のリクエストしたデカンタ刑事は?」

 父の返事を待たずに質問をしたのは母だ。

 ワインをデカンタに移す際に事件の真相に気付く、というパターンの人気シリーズだ。

 最近それにハマってしまった母は、最初から見たいとリクエストをしていたのを、琴美は思い出していた。

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