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all of you   作者: ある
1/2

scene0 [avant]

最優秀助演女優賞は『Wonder』・小津絵以(おづ えい)さん!」


拍手に湧いたその年の東都アカデミー賞。

それは二人にとって特別な日だった。


「残念だったね・・・主演女優賞」


会場となったホテルの一室で、絵以と栄香(えいか)は二人だけの打ち上げをしていた。

柳場(やなぎば)監督の『Wonder』で共演し、今回主演と助演で二人揃ってノミネート。

しかし、自分だけが最優秀賞を獲ったことに少し後ろめたさがあったのか、

絵以はソファの栄香にシャンパンを渡しながらそう呟いた。


栄香本人は特に気にする事もなく、それを受け取ると軽く挙げて


「仕方ないわ。今回は相手が悪かった」


と、微笑んだ。


「そんな・・・演出がもっと栄香さんに合ってれば・・・」


監督と演者、それぞれのカラーや空気や呼吸が合えば合うほど、演者は活きる。

諦めきれないのは絵以の方で。

栄香はそんな絵以を優しい顔でなだめる。


「今日は絵以ちゃんのお祝い。ね?おめでとう」


軽くグラスを当てて、グラスを鳴らす。


「・・・・」


シュワシュワと小さな音がグラスの中で弾ける。


「ねぇ・・・賭けを覚えてる?」


絵以は栄香の隣に座りながら尋ねる。

「ああ、獲れなかったら獲った方の言う事を何でも聞くってやつ?」


そう。

二人はクリスマスに勢いでそんな約束をしたのだ。

栄香は苦笑いした。

敗者として、それを受け入れなければならないから。

「なに?ご飯?それとも何か欲しいものとかーーー」


「私のものになって」


絵以の言葉は、栄香をあまり驚かせはしなかった。


「・・・それじゃ、私が勝った時と同じ」

「・・・賭けの意味、なかったじゃん・・・」


栄香の全てが、絵以のものになった日。


それが、10年前の冬だった。


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