転生 34日目 ゴブリンストーカー その3
今日は休日なので、朝早くに起きて森を訪れている。
ゴブリンに出会えないこともあってそれは困るので、他の冒険者はモンスターを探す時はどうしてるか調べたところ、そもそもゴブリンを意図的に探す冒険者なんていないようだった。
冒険者が討伐して多くの実績になるようなモンスターはそもそも獰猛なモンスターが多いので探すまでもなく見つかることが多いようで、それでもどうしても臆病なモンスターを探す場合は魔法を使ったり、魔道具を使って探すようだが、俺には魔法は使えないし、魔道具は全体的に高いので買えるほどの金がない。
それならば魔法使いの仲間でも作ればいいのかもしれないが、そもそも自分のスペックが戦ったことない、呪殺が使えるはずだが使ったことない、であるそんな得体の知れない人間の仲間になってくれる者などいないだろう。
なにより一人の方が気楽だ。
そういえば魔法といえば、新しい魔法の書を借りてきたが、呪殺について書かれている本だった。どうも人間が使うような魔法ではないらしく、極一部のモンスターのみが使う魔法だとのこと。
まあ前世の俺はモンスターのようなものだったので使えるのかもしれない。
本には詳しくはないが儀式のやり方のようなものも載っていたのでこれで晴れて呪殺の能力を使えるようになったというわけだ。とはいえ人間が使うものではないと書いてあるので儀式が正しい者かはわからないし、まだ使ってはないので多分使えるという感じだが。
森の中で長々と考え込んでしまった。これで座禅でも組んでいたら瞑想というやつだろう。仙人になりたいわけではないのでこれくらいにしてゴブリン探しを開始する。
そう結局のところ足で探すしかないのだ。ないものねだりはできない。
ゴブリンは集団で暮らすと言うことで、どこかに巣があるだろう。それならば近くに水場があるのではと思うので川を見つけ川沿いに歩いてみた。川沿いならば目印もつけやすく場所もわかりやすいのではと思ったというのもある。
しばらく歩くとゴブリンのものらしき足跡が見つかった。足跡探し名人の俺にかかればどうということはないことだ。
探索するのではなく離れた場所からこの辺りを観察することにする。
待っている間はどうしようもなく暇で、借りた魔法書でも持ってくれば良かったなと考えたらこんなところで失くしたら大変なのでやはり持ってこなくて良かったのだろう。
暇に暇を持て余して、小一時間ほど待っていると。ギイギイとなにかの鳴き声が聞こえてくる。
鳴き声の方を見、待っていると俺が待ち望んだゴブリン達が5匹の群れで現れた。
知能はあるとのことだが人間の言葉は流石に喋らないようだが仲間内でギイギイと何かを喋りあっているようにも見える。
ゴブリン達は全員がボロボロの桶のようなものを持っていて、川に近づくと桶に水を汲みだした。
直接水を飲むわけではなく桶に水を汲んで運ぶなんて知能を感じさせられるじゃないか。
水を汲み終わったゴブリン達はすぐに来た方へと踵返したので、急ぎながらも慎重に後をつける。気づかれないことは得意だ。
後を追いながらも木の出来るだけ高いところに印をつける。ゴブリンは小柄なので高いところの方が気づきずらいだろうとの考えだ。
予想通り川からそう遠くないところに巣があった。小さい崖のようになっている下に空いている穴だ。人工的に開けたわけではなく元々開いていた穴を住処として使っているのではないだろうか?
RPG風に考えるとゴブリンの洞窟というテロップが下りてくるのだろう。
巣の入口にはゴブリンが2匹、見張りとして立っている。
こちらは気づかれないように離れた木陰から中を覗こうとするが暗くて全く中の様子はうかがえない。
勇者ならここで突撃してゴブリン退治が始まるのだろうが生憎と俺は勇者ではない。
少し観察をしていると結構ゴブリンの出入りはある感じだった。食料を調達してきてるものから、なにをしているのかわからないものまで。
とりあえずこちらは隠れることは得意なので全く気付かれる気配もなかった。
このまま観察を続けていてもいいのだが、今日はとりあえず道の確保しておきたい。
道しるべを辿りながら、ついでに地面をえぐったりと消えてもいいような道しるべも増やしておく、気づかれても困るが場所が分からなくなっても困る。
幸いなことに迷わずに川まで戻ってこれた。川には石を積み上げて印をつけておく。
大きい川はここしかないので印があるところまでは迷ったりしないはずなのでそこからは特に痕跡は残さずに川を下った。
無事街道に出てこれた。
前々回の逆にゴブリンに逃げられた体験もあったので思ったよりは緊張していなかったが、街道を歩く人達を見ると流石にホッとする。
人通りのある街道からゴブリンの住処まで30分くらいだろうか、かなり近く感じる。意外とこの世界の人々的にはゴブリンと遭遇するのは恐ろしいことでもなんでもないのかもしれない。それでも子供なんかが遭遇するには危ないと思うのだが……
まあこちらの世界の住人でもない俺が心配してもしょうがないことなのだが。
前回はなにも成果を得られずに散々な結果だったが今回は巣を特定できた。大きい進歩だろう。
俺はたしかな手ごたえを胸に国へと帰るのだった。