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005 魔王城にて<グオーガ&ソニア視点>

 グオーガ達四天王は魔王城に帰還した。


 俺様がその他四天王と共に魔王に報告に行く途中、偶然にも通路でソニアと出会った。


「おお、ソニア嬢じゃねぇか。相変わらずイイ女だな! 俺の嫁にしてやってもいいんだぜ?」


 俺様がせっかく声をかけてやったのに、ソニアは冷たい目を向けてくる。四天王の俺様に対して失礼な女だ。


「グオーガ、貴方の嫁になどなる気はありません。少し離れてくれませんか」


 ソニアも魔王との謁見(えっけん)に参加するのだろう。目的地は同じのはずなのにソニアは俺様から離れて歩いた。


「魔王の娘だからってお高くとまりやがって! いつか俺の物にしてやるぞ」


 ソニアを屈服させる妄想をしてニヤリとしてしまう。


「グオーガ、もうすぐ魔王との謁見の間だ。静かにしろ」


 魔王に忠実なカラベが忠告してきた。


「チッ! 俺様に指図するんじゃねぇ」


 四天王とソニアが謁見の間に入り、(ひざまず)く。しばらくすると魔王が入って来て椅子に座る。


「まずソニアよ、人間どもの砦を落としてきたようだな。よくやった。こちらへ来い」


「これくらいは当然です」


 ソニアは魔王の側に立つ。


「……では、魔剣ダンジョン攻略の件、報告しろ」


 魔王の冷たい声が響く。


「魔剣ダンジョンへ行き、魔剣テンペストブリンガーを取って参りました! これはこのグオーガの素晴らしい働きによるものです!」


 俺様が一番活躍したのだ。当然、一番褒美を多く貰うのも俺様だ。


「ちょっと何言ってるのよ! 四天王全員で攻略したからこそじゃないの!」


 ラクネも黙ってはいない。


「……黙れ」


「……」


 魔王の一言で静かになるラクネ。


「お前達四天王が全力で攻略しても魔剣1本しか持ち帰れないとは情けない……」


「で、ですが!」


「言い訳など要らぬ。必要なのは結果のみ。次はないぞ……ところで、お前達に付けた荷物持ちはどうした?」


 荷物持ち? もしかして追放したラングの事を言っているのだろうか。俺様の体がピクリと反応してしまう。


「え、え〜と、ラングの奴はダンジョンでモンスターに襲われて死にました」


 俺様達が追放したことは隠して報告した。ソニアが俺様を睨みつける。何故睨むのか理解出来ん。あんな荷物持ちなどいくら使い潰しても問題ないはずだ。


「はぁ……なんと愚かなことをしたのだ。貴重なユニークスキル持ちだぞ。何故守らなかった?」


 貴重なユニークスキルだと? いくらユニークスキルと言ってもただのアイテムボックスではないか。だが、本心を言うほど俺様は(おろ)かではない。


「な、何故と言われましても……あ、そうだ、ラングは人型ですし、非力すぎて守ろうと思った時には手遅れでした」


 俺様は適当に誤魔化した。


(おろ)かなグオーガよ。罰としてお前には命令を与える。勇者パーティが国境付近のイナカ村近くまで来ているようだ。そこへ行って勇者達を殲滅せよ」


 罰だと……!? ふざけるな! ラングを追放したことで褒美を貰いたいくらいだってのに、何故俺様がこんな目に合わなきゃならんのだ! クソが!


「…………分かりました」


「すぐに出発しろ」


 俺様はすぐに準備をして魔王城を出た。


「ラングめ……死んでも迷惑をかけるとは、最低な野郎だ」


 俺様は苦虫を噛み潰したような顔で勇者討伐の任務を開始した。






<ソニア視点>

「きゃー! ソニア様よ! いつ見てもお美しいですわ!」


「本当です。肌もすごくキレイで羨ましいです」


 私が魔王城に入ると、城に来ていた貴族達がお世辞を言ってきた。いつものことなので笑顔で応えて通り過ぎる。今は魔王であるお父様に報告があるからだ。


 途中で顔を合わせたくない相手と出会ってしまった。


「おお、ソニア嬢じゃねぇか。相変わらずイイ女だな! 俺の嫁にしてやってもいいんだぜ?」


 魔王軍四天王の一人、グオーガだ。どうやら彼は私に好意を持っているらしい。だが、私にとっては嫌悪感しか感じられない。グオーガは馬鹿で自信過剰な上に城での評判も悪い。


(それに、私には既に心に決めた人が居るのです。これ以上面倒なことにならないようにはっきりと断ったほうが良さそうですね)


「グオーガ、貴方の嫁になどなる気はありません。少し離れてくれませんか」


 私は四天王達から離れて歩くことにした。


「魔王の娘だからってお高くとまりやがって! いつか俺の物にしてやるぞ」


(これだけはっきりと拒絶の意思を示しているのに、まだ諦めてくれないなんてどういう神経をしているのでしょうか?)



 ――謁見の間にて。


「まずソニアよ、人間どもの砦を落としてきたようだな。よくやった。こちらへ来い」


「これくらいは当然です」


 お父様から褒めていただき、隣に移動する。次は四天王達からの報告だ。魔剣ダンジョンで魔剣を1本しか手に入れられなかったらしい。


「お前達四天王が全力で攻略しても魔剣1本しか持ち帰れないとは情けない……」


「で、ですが!」


「言い訳など要らぬ。必要なのは結果のみ。次はないぞ……ところで、お前達に付けた荷物持ちはどうした?」


(荷物持ち? もしかしてあの人の事でしょうか?)


「え、え〜と、ラングの奴はダンジョンでモンスターに襲われて死にました」


(荷物持ちは死んだなんて、嘘でも言って良い事と悪い事があります。もしかして、ダンジョンで置き去りにしたのでは?)


 私はグオーガを睨みつけた。


(でも、私はあの人が生きていることを知っているので我慢しましょう。今すぐにでもあの人に会いに行きたいところですが……)


 そんなことを思っていると、四天王とお父様の会話は進んでいた。


(おろ)かなグオーガよ。罰としてお前には命令を与える。勇者パーティが国境付近のイナカ村近くまで来ているようだ。そこへ行って勇者達を殲滅せよ」


(さすがお父様です。失敗した者にはしっかりと罰を与えるべきです)


「…………分かりました」


「すぐに出発しろ」


(とても悔しそうなグオーガ。でも、あの人を亡き者にしようとした罰ですから仕方ありませんよね)



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