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043 漆黒の終焉のガイガ

 通常は街に入り、まずやることと言えば宿探しだが、今回の俺は違った。


「よし、冒険者ギルドに行こう」


 この街には遊びに来たわけじゃない。レベル上げをしに来たんだ。道行く人に聞いて冒険者ギルドに向かった。


 冒険者ギルドの扉を開けると、荒くれ者達の視線が俺に集まる。毎度のことだが、たまに絡まれたりすると面倒だ。受付まで行き、自分がS級冒険者であることを告げる。もちろん冒険者証も提示する。


「人型のくせにS級だと!?」


「マジかよ!」


「作り物じゃねぇのか?」


 様々な意見が飛び交っているが、確かめようとする猛者は現れなかった。


「確認しました。ラング様、どのようなご用件でしょうか?」


「騒がせてすまない。夢幻ダンジョンの情報が欲しいんだ」


「承知しました。まず、夢幻ダンジョンはこの夢幻郷の中央に位置する塔の中にあります」


 夢幻郷に入る前から見えていた塔のことだろう。


「夢幻ダンジョンでは、大量のモンスターが無限に湧き続けます。夢幻だけに……コホン。ですが、1点だけ注意点がございます。夢幻ダンジョンではドロップアイテムがありません」


 ドロップアイテムがないというのは有名な話で、誰でも一度は噂話として聞いたことがあった。ドロップアイテムがない代わりに経験値がとても高いという噂と共に。


「知っている。レベルアップの為に来たんだ」


「夢幻ダンジョンは今まで踏破されたことがありません。果てがないのではないかとの噂もあるほどです。今までの最高記録は現魔王様が到達した666階です。しかし、その階のボスには魔王様でも勝てなかったようです。こちらがボスの資料です」


 以前、デモンズパレスで見た魔王は俺と比べて天と地ほどの差があった。今なら対抗できるだろうか? 666階を超えてみたい。


「踏破を目指されるのであれば、強いメンバーを募集してパーティーで挑むことをおすすめします」


「なるほど」


 俺はパーティーを組む気は全くなかった。テンソルフローで超効率狩りをするのであれば仲間は邪魔でしかない。だから、今は適当に相槌を打っておいた。


「また、食料や回復薬は大量に必要ですし、サポーターの方々とも契約して入念な準備をしたほうがいいでしょう」


 これもパイソンのアイテムボックスがあれば問題はない。


「了解した。考えておくよ」


 曖昧に返事をして冒険者ギルドを出た。そこで俺は固まってしまった。


「!!」


 冒険者ギルドの出入り口を囲むように冒険者風の魔物型魔族たちが並んでいた。


「お前がS級冒険者か……強そうには見えんがなぁ」


 黒いウォータイガーの魔族が一歩前に出た。風格からしてこいつが親分のようだ。


「俺はガイガ。夢幻郷でトップの実力を持つ冒険者集団【漆黒の終焉】のボスだ。俺たちの仲間になれ。お前の便利な能力をフルに使ってやるぞ」


 良く言えば勧誘。悪く言えば奴隷のように働かせたいのだろう。そんな奴らの仲間になどなるわけがない。あとチーム名がダサい。


「……断る」


「この状況で断ったらどうなるのか分かっているのか?」


 ガイガが周りを指差しながら脅しをかけてくる。


「脅しか。だが、断る」


「なんだと!? バカが。痛い目をみないと分からないようだな。お前ら、やっちまえ!」


 じりじりと俺を囲んでいた円が小さくなってくる。さすがにこの人数と戦うのは得策じゃないだろう。


「ふっ!」


 筋トレとレベルアップで鍛えた脚力で跳躍すると冒険者ギルドの屋根の上に飛び乗った。


「逃げたぞ! 追いかけろ!」


 下からガイガの声が聞こえてくる。脚力自慢の冒険者たちが同じように屋根に飛び乗ってきた。


「俺について来ることが出来たら相手してやるぞ!」


 俺は屋根から裏路地に飛び降りる。


「こっちに飛び降りたぞー! ぶべっ」


 後ろの仲間に叫びながら追いかけてくる猿男を気絶させ、また逃げる。1人ずつ相手にすれば安全に倒せるというわけだ。


「俺に任せろ! ぶぎゃあ!!」


「見つけたぞー! はうっ!」


「ガイガ様こちらです! あべしっ!」


 追いかけてきた冒険者達を蹴散らしていく。だんだんと追跡者の数が減ってきた。今なら全力で逃げればなんとか追跡を()くことが出来るかもしれない。


 俺が全力で走ると誰もついてくることは出来なかったようだ。俺は尾行に注意しつつ路地裏の宿に入った。


 宿の店主に口止め料も兼ねて金塊を渡し、部屋に入る。


「ふう、面倒な奴らだった。この街に来たばかりで新参者の俺が奴らを殺したら多分マズいことになるだろうな」


 では、どうするか。答えは1つしかない。


「明日できるだけ早く夢幻ダンジョンに行くしかないな。そしてほとぼりが冷めるまでしばらくダンジョンに篭もることにしよう」


 毎日欠かさず行っている筋トレをして眠りについた。

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