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001 追放

 ここは魔剣ダンジョン102階。


「ラング、アイテムボックスの中身を全て出せ。そして袋に詰めろ」


 妙な事を言われた。


 魔王軍四天王の一人。キングオーガ族のグオーガが荷物持ちの俺にアイテムを出せと言うのはよくあることだが、全て出せと言われたことはない。


「……全部ですか?」


「早くしろ!」


「わ、分かりました。――パイソン」


 意識を右手に集中してスキルを発動させると、手の上に本が出現した。


「アイテムボックス」


 すると、何もない空間に穴が空き、中から回復薬や食料などのアイテムがどさどさと出てきた。そして、言われた通りに袋に詰めた。


「おい、100階のボスがドロップした魔剣テンペストブリンガーはどうした?」


「あ、穴に引っかかってますね」


 魔剣テンペストブリンガーをグオーガに渡す。


「ラング、貴様は我ら魔王軍四天王の部下としては非力すぎる! 今日限りでクビだ!」


「!?」


 直後、グオーガは俺に向かって斬りかかってきた。


「痛っ!」


 剣は俺の片腕を浅く切り裂いた。


「チッ、運のいい奴だ」


 ドンッ!


 斬られた傷口を確認していると、後ろから誰かに蹴り倒された。


「グオーガ、こんな奴に避けられるなんて情けないわね」


 俺を蹴り倒したのは同じく四天王の一人。アラクネ族のラクネだ。上半身は人、下半身が蜘蛛の姿をしている。


 ドスッ!


「うっ……」


 俺の腹の上にラクネの足が乗せられた。身動きが取れなくなってしまった。


「うるせえ、意外とすばしっこい奴なんだよ」


「何故殺そうとまでするんです……?」


 俺は率直に思ったことをつぶやいてしまった。


「何故だと? お前のような非力な人型は見ててムカつくんだよ!」


 魔族には魔物型と人型が居る。基本的に、魔物型は全てのステータスが人型よりも優れており、人型は奴隷にされるなどの差別を受けている。


「そうよ、アイテムボックスが使えるから我慢してたけど、その貧乏そうな安物の装備は何? 今すぐ殺すべきだわ!」


「俺はまだまだこれから強くなれます! それに装備が貧弱なのは給料が未払いだからじゃないですか!」


 数ヶ月前から給料は支払われていない。


 ビュッ!


 顔に謎の液体がかかった。


「ああああああ!」


 顔が熱い! 俺の顔からジュウジュウと音がしている。


「……そのまま死ネ」


 四天王の一人。超酸スライムのスライが酸の液体を飛ばしてきたようだ。


「俺様達のせいだって言いたいのか?」


 ギロリとグオーガが睨む。


 ゴキン!


「うぎゃああああああ!」


 俺の足の骨が巨大なハンマーで粉砕された。ハンマーを武器として使うのは最後の四天王、ゴールデンスカラベ族のカラベだ。


「もう良いだろう。この重傷では死んだも同然だ。今は魔王様の命令である魔剣の収集を最優先すべきだ」


カラベはもう興味もなさそうに先に進み始めた。ラクネとスライもそれに続く。グオーガだけは俺に近づいてくる。


「まぁ、いいか。この状態でダンジョン1階の出口にたどり着ける訳がないしな。ラング、お前がこのダンジョンで死んでアンデッドになったらもう1回殺してやるから楽しみにしておけ……ペッ!」


 グオーガはそう言い捨てると、俺にツバを吐きかけた。そして、先に行った3人を追いかけて行った。


 瀕死の重傷だが、四天王に殺される事は避けられたようだ。


 俺は開きっぱなしだったアイテムボックスの穴から上級ポーションを5本取り出す。1本を飲み干して、3本を傷口に、残りは全身に浴びせた。傷はすぐに塞がり完全に回復した。


「ふぅ――――酷い目にあった。いつか強くなって倍返ししてやる……。まぁ、今は魔剣が手に入ったことを喜ぼう」


 俺はアイテムボックスからグオーガに渡したはずの魔剣テンペストブリンガーを取り出した。


 実は俺のアイテムボックスは普通のアイテムボックスではない。


 どちらかといえば、記録庫である。記録さえすれば、いくらでも同じ物を取り出すことが出来るのである。


 これはユニークスキル【パイソン】の力の一部だ。俺はまだスキルを使いこなせていない。


 現在のアイテムボックスの中身一覧を確認する為に、手に持っている本【パイソンの書】を開く。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 ・魔剣テンペストブリンガー

 ・下級ポーション

 ・中級ポーション

 ・上級ポーション

 ・下級マジックポーション

 ・中級マジックポーション

 ・上級マジックポーション

 ・毒消し草

 ・携帯食料

 ・水

 ・石


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 基本的に、かさばる物や重い物を運ばされた。そのせいで、ポーション類や食料を大量に持たされたのだ。


 石は最初の試しに入れた物だ。


 俺が四天王の部下に抜擢(ばってき)されたのは単なる偶然だが、俺の目的は価値のあるアイテムをアイテムボックスに入れることだった。


 一度でもアイテムを記録してしまえば、自分の物に出来るのだから多少リスクがあっても魔剣ダンジョンに同行すべきだと判断した。


「しかし、殺されそうになるとは思わなかったな……」


 これでも必死に誠実にサポートしてきたはずだ。命令にも逆らったことはない。


 給料未払いについても我慢して何とかやりくりしてきた。


「四天王の奴ら、俺が回復アイテムを無限供給してたことに気づいてなさそうだな……この先に進んだ奴らがどうなるか楽しみだ」


 回復アイテム不足になることは間違いない。このダンジョンの攻略も間違いなく失敗するだろう。


「俺の最優先の目標は魔剣ダンジョンの脱出だ。頑張ろう」


 手に持っている魔剣テンペストブリンガーを見ると禍々(まがまが)しいオーラを(まと)っている。


 アイテムボックスに一度でも入れたアイテムは詳細も確認することが出来る。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


【魔剣テンペストブリンガー】

 ランク:A

 攻撃力:+1000

 属 性:風

 スキル:テンペスト(消費MP1000)


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「この剣さえあれば、なんとか1階までたどり着けるはずだ」


 俺は意を決すると、ダンジョンの出口を目指して進み始めるのだった。


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