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終わりゆく世界の過ごし方  作者: なか
2. 選択のその先には
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2-12. “選ぶ”ということ(3)

「大臣の要求に応えるのか否か。君はどちらを選択するのかな?」


 そういえば、そんな選択を迫られていたわね。


「こらこら、ついさっきまで君の頭を悩ませていた問題だったはずだよ」


 本音を言えばどちらも選びたくはないわ。どちらも望む結果には繋がらない選択肢なのだから。


「“選ばない”と言う選択もありだと思うけど?」


 選ばない? 何を言っているのかしら。


 つまりそれは、“要求に応えない”という選択肢を消極的に選ぶことと同義でしょ?


「その通りだよ。君が如何なる行動をしようとも最終的にはどちらかの選択肢に帰結するわけだから」


 であれば、自分の手で選択肢を選ばなくては。もう誰かに選択を押し付けるのはやめるの。


「だったら、何を優先したいかをまずは考えてみたらどうだい?」


 何を優先したいか?


「そう。例えば、アオの命。2つの選択肢にはアオの生死が含まれていたはずだ。君はどうしたいんだい?」


 決まっているわ。アオくんを助けたい。命の危険に晒すなんて嫌よ。


「それが可能な選択肢を選ぶ場合、『人類にとって不要と判断された』人々は見殺しにすることになるね」


 それも嫌だわ。出来れば多くの人を救いたい。不要な人間なんて誰一人として、この世界には居ないもの。


「そうなると、アオの生死は保証されない選択肢を選ぶことになるよ」


 だから、そんな選択肢なんて選びたくないって言ったでしょ?


「矛盾していることに気づいているかい? 何かを選ぶためには何かを切り捨てなくてはならない。選択肢は2つしかないんだよ」


 どうして? そもそも、選択肢に縛られることが嫌だわ。


 なぜ、妹の命を軽く扱った連中の指図を受けなければならないの?彼らに与えられた結果なんか受け入れてやるものか、それが私の意趣返しよ。


「君は無茶苦茶だな。じゃあ、一体どうするんだい?」


 私が優先すること、そこに向かって進むだけよ。


「へー、そうかい。君は一体何を優先しようと思うんだ?」


 魔法がいけないんだわ。


「へ?」


 ねえ、そう思わない?  魔法という存在が諸悪の根源だと思うの。


「魔法だって?」


 そうよ。魔法という概念を壊すわ。こんなものがあるから人類を選別するという考えが生まれてしまうのよ。だったら、私にとって魔法なんて害でしかない。


「面白いことを考えるね、君は。だが、魔法という概念が急に無くなってしまえば、人類は文明を維持できない。その問題はどうするんだい?」


 今すぐ魔法が無くなってしまえば貴女の言う通りになるでしょうね。


 でも、魔法が発見された300年前ならどう? もっと言えば、魔法が発見できなければどうなったかしら?


 当時は代替エネルギーの研究も進んでいたはずよ。今よりもマシな未来を選べるかも知れない。


「時を遡って、魔法の発見を阻止すると。君はそれを最優先に考えるんだね?」


 ええ。それが私にとっての最優先。そして最良の選択肢。


「なかなか面白い考えだと思う。でも、第三の選択肢を選ぶことが出来る者は、相応の力を持った人だけ。君にはその力があるのかい?」


 私にそんな力はないわ。


「じゃあ、荒唐無稽なお伽話でしかないね。夢物語に浸っている時間はないと思うけど」


 夢物語で終わらせるものですか! 私にはないけど、モモにはあるのよ。妹の力を借りるわ。


「なるほど。確かにモモならば力になるかもしれない。だが、確実性はない」


 確かに確実性はないし、『アレ』を流し見しかしていない。けれど、私の選択肢を叶えるヒントはあったわ。ちゃんと読み込んで計画に盛り込めば実現可能だと思うわ。


「一応、目処は立っているというわけだね。じゃあ、意地悪な問いかけをしよう。君の選んだ、魔法という概念の破壊。その結果にアオの命が保証されなかった場合、君はどうするんだい?」


 ......言ったはずよ。私の最優先は、魔法を無くすことだって。


「君は酷い女だな。未遂とは言え、告白までしようとしてくれた想い人の命を優先しないのか?」


 大丈夫よ。命を救うかは捉え方によるので何とも言えないけど、最終的にはアオくんを必ず救うことが出来るはずだから。


 それに、もしそうなったらとしたら、私が先にーー。


「んー、それは自己犠牲? それとも破滅の美ってやつかい?」


 どちらでも無いわ。この状況を招いたことに対するケジメよ。


「そうかい。それにしても、君は少し変わったね。前はもっと理屈っぽくて臆病で慎重だったはずだけど。どことなくモモに似てきたんじゃないか?」


 そうなのかな?でも双子だもの。正反対な二人と言われ続けてきたけれども、深層では似た部分があったのかも知れない。もし本当に、自分の中に妹を感じることのできる部分があるのなら、それは嬉しいことだわ。


「そうだね。今回モモの力も借りるわけだし、姉妹で目的に向かって頑張ればいいさ」


 言われなくてもそうするわ。


「考えが纏まったのであればそろそろ意識を起こそうか。君の想い人が待っているよ」


 そうね。貴女のお陰で自分と向き合い、こうして自力で選ぶことができたわ。ありがとう、わたし。


「ふふ。どういたしまして」


 ***


 顔を上げた先には、心配そうな顔でシロを見つめるアオの姿があった。

 思考の邪魔をしないように黙って彼女を見守り続けていた優しさが実にアオらしいと、シロは思わず微笑む。


「アオくん、決めたわ」

「そう。シロちゃんの答えを聞いても大丈夫かな?」


 ーーアオくん。逃げずにちゃんと自分で選択したんだよ。これが私にとっての最良の選択なの。


 ーー貴方の想いにも必ず応えるから。だからもう少し待っててね。


 シロは背筋を伸ばし乾いた唇を舐めると、その口を開く。

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