Act.00 Sweet dreams.
「・・・・・」
目が覚めると遮光カーテンからはみ出た夕日の光が少年の顔を染め上げていた。
スマホの通知を見つめながら、微弱な呼吸がどんどん荒々しくなっていく。
ドアを開けて飛び出し、必死の形相で走り抜け、第一地区みどりヶ丘公園とたどり着いた。
「遅かったね」
黒く澄んだ瞳で少年を見つめ続ける少女が待っていた。
「どうしたの?急に呼び出して、、、珍しいね」
「うん、どうしても伝えたいことがあって」
「なんだい?」
「ねぇ、、、手品ってさ、何も知らずに見せられるとすごい驚けるし、不思議に思うよね、どうやってるんだろうって」
「手品?、、う、うん、、、そうだね、でもどうして手品?」
「種明かしされるとびっくりするくらい単純なときが多いでしょ?、、それでまた驚かされる」
「・・・」
「私ね、たまに生きるってなんだろうって思うことがあるの」
「・・・うん」
「そういうことを常に考えているとね、ふと目にした手品でも気づいたことがあるんだ、もしかして今見ている感じている世界は実は手品で、人はそのトリックに気づいていない、だけど向こうからは種明かししてくれない」
「・・・何が言いたいの?」
「だからね、自力でその種明かしができたら生きるという目的が達成されたんじゃないかって、もう知ることができたから、もう悩む必要もないから、この世界に留まる必要はないんじゃないかって」
「・・・あの」
「だからね」
「・・・」
「だから、私を、、、あなたのその銃で撃って、殺して」
「えっ!!!」
少年の右手には拳銃を持っていた。
「えっ!!そんな!」
少年の右手が勝手に動き出し、少女に銃口を向け出した。
必死に左手で抑え込もうとする少年だが、制御しきれず引き金を引いてしまう。
「くそ!!」
前を向くと少女の顔は涙を流しながら恍惚の表情を浮かべ、両手を広げていた。
「ありがとう」
・・・バァァァァァン!!!
「・・・」
辺りは不気味なほど静まり返った。
胸を撃ち抜かれた少女の身体は倒れることもなく微動だにしていなかった。
それを放心状態で見つめていた少年はその静まり返ったところに微風が吹いていることに気づいた。
そして辺りは深い夕闇に染められていた。