なんでもなおし(強化版)
猫はツンデレ。
『リンがマリーを泣かしたのです』
バステトはヒドイヤツだ、と責めるような視線を向けてくる。
うぐっ……本当に申し訳ないにゃ……。明らかに説明不足だった、ギルメンにも「お前はもう少し考えてから言動しろ!」と良く言われるんだにゃ……
マリーは赤く腫らした目を此方へ向けると
「ぐすっ、それがあればみんなを治せる薬が作れるんですよね……?」
袖で涙を拭きながら再度聞いてくるマリーにゃん。その顔は心配そうにゃん。紛らわしいこと言って申し訳ないにゃ! ボクはその心配を取り除くため答えた。
「アイテムに関しては問題ないにゃん! これまでの冒険で集めた物が有り余ってるからにゃ!」
再度説明するが、冥王の天秤効果はずばりアイテム変換だ。
対価を支払えば何でも手に入る。そう聞けばぶっ壊れ性能だと思うだろうけど、上手い話には裏があるって良く言うじゃないかにゃ?
冥王の天秤の欠点の一つは変換失敗時のアイテムロスト。
そしてもう一つがレベルのロストだ。
変換を失敗すると、皿に載せたアイテムのみならず自分のレベルまでロストするという鬼畜使用だにゃ。
リンはこれを使った際、当時500以上あったレベルを一桁まで落としたことがある。
『あの時は散々でしたねー』
バステトはその当時のことを思い出し遠い目になる。
変換に使用したアイテムは全てロスト、ノリで突っ込んでしまった討伐アイテムが悪かった。そのアイテムの性能が性能だったからギルメン達に散々怒られたにゃん。
レベル上げにも苦労するわで本当に散々だにゃ! そんなことがあったからこれは封印してたんだけどにゃ……。
ボクは忌々しい前歴のある天秤を睨み付けていると、マリーにゃんはいきなり立ち上がった。
「リンさん!」
マリーにゃんが神妙な面付きでボクを呼んだ。
「マリーにゃんどうしたのかにゃ?」
するとマリーにゃんは言い難くそうに目を下に向けた。ボクが叱られた時と少し似てるにゃん。
「あ、あのっ! 今まで言うの忘れてたんですが……竜から助けて貰うばかりか、村まで救おうとしてくれて! ……もう何から何までありがとうございます!」
と深くお辞儀をするマリーにゃん。
「お、おうにゃ」
ちょっと照れくさいにゃ! ボクは赤くなった顔を隠すため作業に集中することにした。べ、別にお礼なんて言われなくても助けるのは当たり前にゃ!? とボクは見せる訳でもないツンデレモードを心の中で登場させた。
その後ボクは黙々と変換に必要な作業を進めた。これもダメ、あれもダメ、どれもイマイチレア度が足りないにゃー。原因不明の病を治すならやっぱりあれしかないにゃ?
『リンまさか……?』
あれを作るつもりなのですか?と驚いている。
「リンさん?」
マリーは何のことだか分からないようだにゃ。ボクは意を決して言う。
「『なんでもなおし』を作るにゃん」
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『エルフの翡翠』とは隠れ里に住むエルフが作る秘薬だ。その効能は凄まじく、一言で言えば何でも治る。
頭がぶっ飛んで無くなっていたが、生えてきた。医者が匙を投げる様な難病に幾つも身体を蝕まれていたが、たちまち治った。お伽噺に出てくる様な魔女に掛けられた呪いだろうが関係ない。
この薬は所謂万能薬なのである。そして色んな逸話を持つこの薬はプレイヤーからはこう呼ばれていた。
『なんでもなおし』と
その様な薬が容易く手に入る訳もなく。
対価となるアイテムも膨大な物となるのは確実……
「うーん……」
リンは薬に釣り合うアイテムを探してみるも、中々見つからなかった。最悪討伐アイテムを天秤に掛けるのもなのだけど、生憎、天秤に掛けられる討伐アイテムは一つと決まっているのにゃん。
「足りるかにゃ……?」
ボクはアイテムボックスの中に訊いてみた。
目ぼしい物はギルドのボックスの中に仕舞ってあるしにゃ。
中にはゴミゴミゴミゴミゴミ……うーん、あまりにレア度が低いとカウントされないしにゃー。悩ましい、とボクが変換に使うアイテムを捜していたその時、ふとそれが目に入った。
「げっ、これは……」
そうお久し振りの摩擦電々虫の体液である。そう言えば棄てるの忘れてたにゃん……。嫌なことを思い出したボクは思わずうへぇ……となった。
『おっ、そうですリン!』
するとバステトは何か思い付いたのか、一つ提案をする。
『どうせならそれ全部使っちゃいましょう』
確かにこんな物全部使っちゃえばいいのにゃん|!
変換のアイテムが決まったと同時に、生ゴミの処分先が決まった瞬間である。
バステト『黄金雷殻 ケオン・マスの撃破ドロップは腕輪だけじゃなかったのです』
リン「あれの体液とか使い道ないにゃ……」