残酷な事実
吾輩は猫である。名前は寝転ぶだけですっごい埃の取れるネコで……)長いわっ!
「っとその前に!」
女の子を被害のない場所へ……
木の陰に寝かせておく。念のため黄金雷輪を着けてっと、他にも色々と討伐武具を……これでよしっ!
少女の身体には大量の討伐武具が装着されていた。これでよしっ!と少女の安全を確保したリンは竜の方向へ向き直り。
「かかってくるにゃん!」
バステトと竜がズコー! 滑る姿を幻視した。にゃ?
『リ、リン……相変わらずマイペースなのです』
バステトが乾いた笑い方をするにゃ、どうしたのかにゃ?
「へ? 何がにゃ? 竜! 何時までぼーっとしてるにゃ! もしかして怖じ気付いたのかにゃ?」
『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
な訳あるかっ! と言ってる感じの咆哮にゃん。……あれ、何で意味が分かるにゃん?
『だってリンですから』
当たり前じゃないですか、と言った感じで言うバステト。
「それどういう意味にゃん!?」
何かバカにされてる気がするにゃ!
全くもう! 最近バステトがボクに対する態度が酷いような気がするにゃん!
『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
『来たのですよ!』
痺れを切らしたのか、竜はこちらへ急降下する。雷を纏った状態でのスピードは音速の100倍は優に越えるだろうにゃ。
ボクに狙いを定めた竜、そんな竜に狙いを定めたボクは、豪速で近付いてきた竜の──
顔面を殴り付けた。
すると竜の頭はパァン!!! と派手に弾けとんだ。文字通り。うわぁ……汚い花火だにゃ。音速の100倍も速度で向かってきたものを殴ればそうなるのも当たり前にゃよね。
「まぁ、こんにゃもんか」
殴った感触から確信したけど、やっぱりあれは生き物じゃないようだにゃん。機械だにゃ、機械。今もそこで首の無い場所をパチパチさせてるにゃ。
すると、衝撃音で目が覚めたのか、木の陰で寝かせていた少女は起き上がると、目の前に衝撃で吹き飛んだ首の無い竜の胴体が……
「イヤァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!?」
衝撃の光景に少女は
バタリ
「あ……」
再び気絶した。
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そして数分後──
「あれ……ここは?」
「あ、おはようにゃ!」
『災難でしたねー』
ジト目でボクを見ながらそう言うバステト。
うっ、思わず目を逸らすボク。ま、まさか目の前に落ちるなんて思わなかったのにゃん!?
「ハッ!?竜は!? 天上墓褝は!?」
首を忙しなく動かす少女。
「とにかく落ち着くにゃん、それから事情を話して欲しいにゃん」
はぁ……と憮然とした表情で了承する少女。彼女はスーハースーハーと深呼吸をすると
「よしっ! 落ち着いた!」
寧ろやる気に満ちてないかにゃ? この娘天然っぽいにゃん。
とりあえず名前を聞いてみる。
「君の名前は?」
「マ、マリーです!」
そう言った後あなたの名前は?とこちらを見詰めてくるマリーにゃん。あ、先に名乗るのが礼儀だったにゃん!
とボクは姿勢を正して自己紹介する。
「失礼したにゃん。ボクの名前はリン。で、この喋る腕輪がバステト」
「喋る?」
『マリー宜しくお願い致します』
「うわっ本当だ! 喋った!?」
「ドライブって知らないにゃん?」
うん、と頷くマリーにゃん。ドライブを知らないって、君が住んでいる所ってどれだけ田舎にゃ……いや、この考えは失礼だから止めておくにゃん。
なら、プレイヤーのことも知らなかったり……
「プレイヤーって知ってるかにゃ?」
「知らないです!!!」
何故か自信満々に言われる。
やっぱり……ボクはガクリと肩を落とした。出来れば他のプレイヤーと合流したかったんだけどにゃー。仕方にゃい、無い物ねだりはしないにゃん!
そういえば、何故かネコの手の効果が竜を倒したにも関わらず続いてるにゃ。
ボクは彼女に幾つか聞きたいことがあった。
「マリーはどうしてこんな山奥にいるにゃん?」
「実は……」
彼女の村で流行っている感染症の話。そして何でも治る天上墓褝の昔話。妹のアリーにゃんを治すため家族に内緒で山奥へ天上墓褝採りに来たこと。全ての顛末を聞いた後、ボクは額に手を当てた。
「はぁ……」
「これさえあればみんな助かるんですっ!」
暗闇の中で一筋の光を見付けた気分だったのだろう。マリーにゃんは凄く嬉しそうな表情でそう言った。だが、残酷なことに目の前の少女は大きな勘違いをしている
「この花、天上墓褝はにゃ毒花、つまり……猛毒なのにゃ」
『あ、意外とあっさり言うんですね』
「え、ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!?」
彼女はへなへなと膝を地面に付け、そんなぁ~……とぶつぶつ呟いていた。
「やっぱり勘違いしてたにゃね、君はその花を何だと思ってたんだにゃ?」
「どんな傷や病気でも治る凄いお花だって……」
ぐすっ、と泣き始めたマリーにゃん。事情が事情にゃん。みんなを救うを思っていた花が実は毒花だったなんて最悪も良いところにゃ。
マリーを見つめボクは考える。
彼女を救うことは彼女の村のみんなを救うこと。村のみんなを救うことは彼女を救うこと。つまり救助対象にゃん。
あー!……こんな考え方ボクも嫌なヤツになったにゃん!絶対アイツに影響されたにゃ……
と何処かにいるであろうエルフに八つ当たり気味な怒りを覚えた。
『でもリンらしい素晴らしい選択肢だと思うのですよ』
うっ……何かこそばゆいからやめて欲しいにゃん!?
助けたいから助ける!それでいいにゃ!
ボクは衝撃の事実に涙を流すマリーにスッと手を差し延ばした。涙で濡らした瞳を此方へ向けた彼女に、意を決してボクは口を開いた。
「君の村を救いに行くにょん!」
『リン……』
か、噛んでないにゃ!
リン「また噛んじゃったにゃ……」
バステト『リンって大切な場面でいっつもかみますよねー』
リン「穴があったら入りたいにゃ!?」
バステト『ダンボールなのです』
リン「にゃあぁぁぁぁぁ!!!!」
↓ダンボール
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|(ФωФ)←←←リン
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