Ωの俺が楼主になった理由
悠助は代々続く、名家の跡取り息子だった。
αの娘ばかり産まれていたところに、悠助を授かった。αの家系だった事から、自然と悠助もαだろうという期待に反し、悠助はΩの性だった。
「何故、お前はΩなんだ。」
「Ωの子供等家には要らぬ。」
(煩い。二度とあの家には帰らない。)
縁談話の帰り道、悠助は両親達からそっと離れて、走り出した。
「はぁ、はぁ...。」
「誰だ。」
低い声の男に塀の向こうから呼び掛けられた。
辺りを見回すと、遊郭の裏側の細い小道だと分かった。この時間帯からすると、声の主はこの遊郭の楼主なのだろう。
「行く宛が無いんです。家から逃げ出してきて。」
「・・・今、使いをそちらに向かわせる。その男についていけ。」
男は立ち上がったようで、ギシリと音がして、すぐに襖を開けて、部屋の中に入って行ったようだった。
(どうして、こんな俺を。)
「貴方ですね。」
声の主は、
サラッとした傷のない黒髪を後ろで一つに結んでいて、黒に近い紫色の袴の上から黒鳶色の羽織を羽織っている男だった。年は悠助と同じぐらいに見える。
「榊様がお呼びです。ついてきて下さい。」
男は表情を一つも変えず、淡々と言い放った。
(この人はαなんだろうな。)
悠助は男の後ろ姿を見つめて、そんなことを考えた。
「榊様、男を連れて来ました。」
男は襖越しに訪ねた。
「入れ。」
「はい。」
男はゆっくりと襖を開けた。
50代ぐらいで髪は白く、抹茶色の長着に身を包んでいる。
「私は榊。この遊郭の楼主だ。」
「悠、助です。」
「悠助か。突然だが、ここの楼主にならないか?」
(この人は何を言ってるんだ。)
「俺、Ωですよ。」
「Ωで、結構。貴君が了承してくれるなら、ぜひ、任せたい。」
「分かり、ました。やってみます。」
「やってくれるか。それなら早速、楼内を案内しよう。
そいつの紹介がまだだったな。」
「葵だ。楼主の守り人をしている。時期に貴方を守る事があるだろう。その時は宜しく頼む。」
さっさと変わらず、素っ気なく答えた。
(Ω嫌いか。そりゃそうだよな。)
悠助は自分の中で、葵のことは自己完結して、それ以上問い掛けることはなかった。




