カルテNO.2 中村(武闘家)8/8
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「よし、出発だ!」
勇者の掛け声で、一同は「おー!」と気合を入れ、樹界深奥に入った。
「中村さん、大丈夫?なんだか顔色悪いけど」
魔法使いが心配そうに中村のほうを見た。
「ああ、絶好調よ!心配ねぇって」
中村が引きつった笑顔を見せると、勇者も「最近潜ってなかったみたいだけど、何してたの?」と聞いた。
中村は「へへん」と笑い、「新しい技を開発してたのさ」と言った。
「へー、どんな技?」
一同の視線が中村に集まる。
「うん? そうさなぁ。一言では言えないんだけど……」
中村がもったいぶっていると、さっそくモンスターが現れた。
中村はいち早く先制攻撃を仕掛けながら、「腹式呼吸とか」とつぶやいた。
※※※
「やあ、どうもありがとうございました。本当に助かりました」
医師が丸顔の中年男性に礼を言うと、男性は「いえいえ、うちのモンローが先生の治療のお役に立てたなら、私もうれしいですよ」と答えた。
「しかし、オオトカゲなんて一体何の治療に使われたんですか?」
不思議そうに尋ねる男性に、医師は「PTSDの治療に、不可欠だったんです」と真面目な顔で言った。
男性の足元で、張りぼての羽を取ってもらってすっきりした顔のモンローがうずくまっていた。
『ダンジョンメンタルクリニック』第2話、いかがでしたか?
心の病気や障害で苦しんでいる人たちへの、理解の一助となればという思いでこの作品を書いています。
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