カルテNO.2 中村(武闘家)6/8
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「中村さん、どうもお疲れさまでした。これで汗を拭いてください」
中村の4回目の診察を終え、医師は中村にフェイスタオルを渡しながら言った。
「やあ、どうも先生」
ダンジョンでドラゴンの炎を浴び、瀕死の重傷を負った時の様子を振り返るセッションを終えた中村は、ぐったりした様子で医師からタオルを受けとりながら答えた。
「どうです、先生。あと2週間で、俺はダンジョンに潜れるようになりますかね」
タイムリミットが迫り、中村は焦りを隠せずにいた。
「そのことなんですが、中村さん。治療を1段階進めてみようと思っているんですが……」
医師の言葉を聞いて、中村はソファーから身を起こした。
「おう、先生。またダンジョンに潜るためなら、どんなことでもやってみせるぜ」
勢い込む中村に、医師はまだ決断しかねる様子で「しかし、これはちょっと負担が大きいというか……」と、言葉を濁した。
「なんだよ、先生らしくもねえ。こちとらとっくに覚悟はできてるんだ。どんな治療でも受けるよ」
中村の熱意に押され、医師は次回の診察日時を指定した。
※※※
「せ、先生。こいつは……」
5回目の診察の日、約束の時間にシンオウメンタルクリニックを訪れた中村は、医師に導かれてクリニックの裏手にある空き地にやってきた。
大抵のことには驚くまいと、十分心構えのできていた中村であったが、そこにそびえる巨大な鉄の檻と、その中にいる生物を見て絶句した。
「はい。ドラゴンです」
診察室にいるときと変わらぬ冷静さで、医師が言ってのけた。