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精霊の使い  作者: 西瓜
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第4話 遭遇

 泉を出発してから一時間、シルフが言っていた契約の力に、私は驚かされ続けていた。


 見知らぬ土地なのにどこを通れば近道なのか瞬時に閃き、木々が塞いでいるところは私が近づくと生きているかのように動き、道が出来てしまう。


 おそらく、彼女の加護下にあるところはこれらの力が発生してくれるのだろう。


(これなら本当に朝方には着けるな……)


 私が一息つくために近くの木に寄り掛かって水袋を取り出そうとした時だった。


「……!」


 近くの茂みから二つの気配を感じ取る。


 私は懐からナイフを一本取り出し、それにシルフが発していたような風を纏わせるようにイメージした。


 するとナイフは翡翠色に輝き、柄部分には風が渦巻き始める……が、しかし始めての力の使用だったためか、力の加減を間違えてしまい、風の力は辺りにはじけ飛び、ナイフは砕け散ってしまう。


(まずい!!)


 と心の中で舌打ちをしながら、私は慌てて懐からまた一本、ナイフを取り出して構え直す。


 しかし、風の力を使用したことによってか二つの気配は自分達から姿を表した。


 気配の正体は草木で体が構成されているオオカミ──ウッドウルフと呼ばれる生き物だった。


 賢く、戦闘能力も高いため複数のウッドウルフに遭遇した時は無傷では済まないような手ごわい奴らだ。しかし、どういうわけか、ウッドウルフ達は襲いかかっては来ない。


「……これも契約の恩恵なのか……?」


 二体のウッドウルフは不思議なことにその場にひれ伏していた、だがよく見ると片方のウッドウルフは傷だらけである。

 どの傷も深くはないが最近負ったようで新しかった。


 私は傷だらけのウッドウルフに近づき、おそるおそるその頭に触れると、感情のようなものが頭に流れ込み、ウッドウルフと一つになった気分だった。


 私を精霊と思っているのか畏れ敬っているような感触であった。


 もう片方の頭にも触れてみると、今度は三匹の幼いウッドウルフ達の苦しむ姿がくっきりと浮かび、胸が詰まるような痛みに襲われた。


 (この二匹の子供なのだろうか、そうだとしたら、この近くに住処があるのだろう。)


  早く王国に行きたいと思ったが、苦しんでいる子ウルフ達の姿が頭に焼きつき、離れなかった。


「手当てくらいならしてやれるはずだ……お前達の家に案内しておくれ」


 つぶやきながら二匹の頭を撫でると彼らは顔を見合わせた後に私を案内してくれた。


 住処は腐って倒れた縦幅が異常に広い木の中に作られていた。


  中には草が敷き詰められていて、特別丁寧に作られているところには、三匹のウッドウルフの子供が横になっていて、全身に力が入っていないのかぐったりとしていた。


 これが病気であれば治せなかったが子ウルフ達に触れてみると幸い栄養不足なだけだということがわかった。


 私は腰に縛り付けてある袋から大きな赤い木の実と水色の透き通った木の実をいくつか取り出すと三匹にそれぞれ一つずつ与える。


 親ウルフたちは不安そうに見守っていたが、子供たちが木の実を食べて元気を取り戻しているのが分かると、安心したのか静かに近寄り子供たちの元気に食事する様子を見ていた。が、どうやったのか?といった様子で見つめてくる。


「この赤い木の実はディトロと言って中に果肉が詰まっていて栄養の塊みたいな物なんだ、それで水色の木の実の方はオーと言って甘みのある水を大量に含んでいるんだ」


 説明し終えると伝わったのかはわからないが親ウルフ達は感謝の気持ちを表しているかのように体を擦り付けてきた。


  私は元気に木の実を食べる三匹の子ウルフ達を見つめながらも、外から微かに感じる殺気を決して見落としたりはしなかった。

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