第2話 力
薄緑色の月が木々を照らす中、私は真夜中の自己紹介の最中だった。
「以前は護衛士や傭兵として活動していて、各地を転戦していたんだ、それなりに活躍もしたからお金には困ってない……ただ、生死を掛けた職だからそれなりに恨みも買われているかもしれないな。」
私は一通りの自己紹介を終えるとシルフは私をまじまじと見つめた。
「ほぇーやっぱり武人だったのね!その髪型はショートボブていうのかしら? 身体も引き締まってるし、顔も整っててきれいね」
私は褒められることには慣れていないため、照れくさく感じる。
「自己紹介なんてする必要あったのか? 契約によって大体のことはわかるんだろ?」
私の問いかけにシルフは申し訳なさそうに答える。
「確かに契約によって大体のことは分かるんだけどね……それは大まかにしかわからないのよねー、君が武術に通じているのは分かるんだけど、何を得意としているかまではわからないのよ」
申し訳なさそうにしていた彼女だったが、切り替えが早いのかすぐに目を輝かせて聞いてくる。
「それで、君はどういった武器を扱っているの? やっぱり剣? それとも槍? 契約者として武人は初めてだから気になっちゃうわ! 」
「あー、えーと……ナイフ」
「へ?」
「ナイフやダガーみたいな暗器さ。毒とかが仕込みやすくて使い勝手がいいんだ。」
「そんなぁ〜…契約の力が活かしきれないじゃない……」
シルフはなぜか無念そうにしている。
「えーと、弓も使うが……」
「おぉ!いいね!ナイスセンス!弓なら活かしきれるわ!」
今度は輝かんばかりの笑顔を浮かべる。
「……その契約の力ていうのはなんなんだ?」
「あぁ、言ってなかったわね、契約者はね精霊の属性の力を借りてその力を具現化できるのよ、弓矢だったらあたしの風の力を加えることで加速させることもできるし、精霊の力が加えられた攻撃は精霊の力でしか防ぐことができないのよ!」
「へぇ、それは凄い! 使い方によっては大きな力になりそうだな」
「後、具現化させてそのまま相手に攻撃することもできるわ、私の力の場合カマイタチを出して切り刻むことも可能よ」
「それだけ大きな力を与えるてことはお前にかなり負荷がかかるんじゃないか?」
「いや、欠点が二つあって使用する場合は私じゃなく、使用者自身の体力を削ることになるわ、それと自分の攻撃に付与させるならイメージしなければならないし、相手に使用する場合は目で対象を捉えなければならないから動きの速いものには苦戦するかもね」
「まあ、戦闘以外でも恩恵はあるんだけど、それはその時に自分で分かると思うわ」
「まぁ気に留めておこう」
「さて、話は変わるけど君にはこれからアイオロス王国に行って人々の信仰を集めて来てもらうわよ」
──アイオロス王国──何回か訪れたことがあるが様々な政策が行われており、活気的な国だった。
それに現在、王位に就いているセレーナ女王は仁君として名が知られている程で国民からの信頼も厚い。
「確か、風の精霊を崇拝している王国だったかな? そこに向かう目的は精霊のエネルギーを集めるためか?」
「そうね~このままだといつ、君の卵が孵化するかはわからないわ。あたしに見えるソレはまだとても小さくて微弱なものだけど、成長するための条件が整ってしまえば一気に侵食が早まる恐れもある。あたし自身あの塊が何のために卵を産み付けたのか意図は全くわからないんだけどね」
「とにかく! あたし達は事態に備えて力を付けるの!君にあたしの運命もかかってるんだら頑張りなさいよ〜! 」
シルフに叱咤激励されながら私は彼女の使いとしてアイオロス王国へ向かう準備に取り掛かった。