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精霊の使い  作者: 西瓜
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第8話 祭りの始まり

 城門を抜け、馬車を下りる。


 時刻は午前9時。


 目眩がする程に行き交う人々、そして、それに劣らないような数の出店が出ていた。


「凄いな……!」


 シルフィは思わず呟く。


「今日の午後から7日後の午前中まではアイオロス王国復興記念祭だからな! 王国のお偉いさんも、俺達平民も一丸となって盛り上げるんだよ、中央街では食い物、俺達の店がある東区では雑貨品やこの日の為に作った工芸品を出品している店が多いぜ」


 ボンが馬車から荷物を下ろしながら、説明してくれる。


 ボンを手伝いながらバンが続けて補足する。


「五年前に帝国に襲撃を受けて、当時の女王様が殺されたんだ……でも、その娘の現女王のセレーナ様が逃げ延びた国民を導いて、復興に向かっていかれたんだ」


 セレーナ女王は名声高く、顔もどこかで見たことがあるはずなのだが、全く顔のパーツがイメージできない。


「そうだったのか…………どこか引っかかるんだがどうにも思い出せないな……」


 バンは私の顔をまじまじと見つめる。


「結構大きな事件だったんだがな……? やっぱりルフェールは記憶喪失てことで間違いないみたいだな」


「そうみたいだな。…ん?バン、あれはなんの集団なんだ? 」


 私が指さす先にはメイド服を着た女性達が街の中央に集まっていた。


「んー? ……お!あれは王国の魔法部隊じゃないか! 色んな属性の魔法を使って開会式を彩るんだ、絶対見た方がいいぜ」


「……? 確か、アイオロス王国が誇る軍隊は騎士団じゃなかったか?」



「その通りだよ、前までは陸戦を中心とした騎士団だけだったんだが、女王様の手ほどきで魔法部隊と対空魔法部隊も編成されたんだ」


 バンは口を止めることなく熱く語り続ける。


 「だが、やっぱり戦力の中心は騎士団だな、副団長のルーシーさんは剣術の腕も人柄も素晴らしいぜ……!」


「副団長? 団長はどうしたんだ?」


「いやー詳しいことは分からねぇな。かなりの高齢者らしかったから隠居したとか死んだとか情報が曖昧なんだ、まぁ、ルーシーさんがいればこの国も安全だろうな」


「へー? そんなに強いのか?」


「あぁ! なんでも噂によると四つのアーティファクトを女王様から授かっていて、本気を出すと止められるのは団長ぐらいだったとか」


(戦ってみたいな……)


「なぁ、バン……」


 私がアーティファクトについて聞こうとした時だった。


「おい、バン! サボってないで手伝ってくれよぉ!!!重いんだよこれ!午後に間に合わねぇって!」


 一人で荷物を黙々と下ろしていたボンが限界を迎えていたらしい。


「てなわけでだルフェール、俺はボンを手伝うからちょっと散策してこいよ、絶対楽しいぜ!」


「そうさせてもらうよ、後で店の方に寄らせてもらおうかな」


「おう! また後でな!」


 ━━━━━━━━━━━━━━━━


 ボンとバンと別れてからシルフィは中央街の屋台を見て回っていた。


 夜から何も食べていなかったので空腹感が一気に押し寄せてくる。


 何を食べようか悩んでいると香ばしく、甘い匂いが漂う店を見つける。


 看板には「スイートビーの焼き蜜」と書かれていた。


「スイートビー?聞いたことがないな……?」


 私が呟くと


「私達が生み出した蜂達だよ〜、とっても純度が高い蜜を作ってくれるんだよ〜」


 屋台の奥から店主らしき女性が喋りながら出てくる。


「え! 黒髪!?珍しいねぇ〜!」


 私の髪を見て珍しがる店主に疑問を覚える


「黒髪が珍しいて変じゃないか?」


「いやいや、この国ではお客さん一人だけかもよ? 」


 まさか、そんなはずはないと思ってシルフィは話を戻す。


「それより、生み出したてのはいったいどうやって……?」


「あぁ!そうだったね、お客さん、ポイズンビーは知ってるだろ〜?」


「あぁ、何度か遭遇したことがあるな……かなり強い毒を持っているが危害を加えない限りは襲いかかってはこない中立的な奴らだったな」


「そう!その蜂達は危害を加えられると体内に猛毒を分泌する、でも逆に一切ストレスを与えないで飼育することで甘い蜜を生成するんだよ、心を込めて飼育するから蜂たちも友好的で案外いい友達になれるしね」



「まさに努力の結晶だな……三個ほど菓子を頂くよ」


「まいどあり!銅貨三枚ねー、 熱いうちはトロトロで水飴みたいな感じだけども冷めるとサクサクして違った美味しさになるから分けて食べてみてね 」


 早速、熱々の内に一つ頬張る。


「はぐっ……ふ、ふぁぁぁ」


 アツアツの蜂蜜を生地で包んだだけのお菓子なのだが、一口噛んだ瞬間に蜂蜜が溢れ出てくる、そして濃厚な甘さが一気に押し寄せてくるが生地が程よい塩味を出していて飽きさせない……!


 続けて残りの二つも一気に食べる。


 全身が温まり、ポカポカしていて気分が良くなる。


「し、しゅごい……」


「身体に染み渡るだろ? 生地には岩塩と唐辛子の粉をまぶしてるんだよ、辛さは蜜の甘さで打ち消しているんだ、それと少しばかりお酒を……ってお客さん大丈夫かい?」


「あ、あぁ!問題ない!……追加で五つ下しゃい!」


「お酒弱いんだね……」


 店員に苦笑されながらもお代として銅貨五枚を支払い、店を後にする。


(お腹もだいぶ膨れたことだし、ボンとバンの店にでもいこう)


 シルフィは上機嫌のまま東区へと走っていくのだった。






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